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スレッドNo.2399

感想と評 6/30~7/3 ご投稿分  三浦志郎  7/9

夏生さん、お大事にしてください。


1 晶子さん「AIへ~そこから進化するアトムへ」 6/30

まずは2連まで。初連はオープニングを飾るにふさわしい「名連」です。AIに対する人間の切なる願いが詰まっています。 しかも―、

その不完全なもののひび割れに沁み込んでいくものが
愛だよ

これは“完全な”名言です。 気高い意志があって初めて紡ぎ出される言葉でしょう。絶賛!
「AI~アイ~愛」―この論旨もとてもステキです。 晶子さんのAIに対する願いがわかります。
続く2連ですが、2行目はフレーズが異様に長い。上記抜き書きのラインをよく見て折り返してください。ついでに、意味的にもう少しこなれたほうがいいかも、です。
さて、それ以降。どうも論旨が違う方向に行っている気がするし、核心がどうも見えてこない書き方をされているように思います。AIが生み出された、この星の必然性のようなものは感じたのですが。
その必然性のようなものが「AIよ、アイだよ、アイ…」ということなのかどうか?そういったことが副題と繋がるのかも?
初連がいいだけに、後半はちょっと僕はモヤモヤしました。初連の思考の流れで最後まで行って欲しかった気はしています。佳作一歩前を。


2 freeBardさん 「燕」 6/30

まず燕は人間にとって益鳥であり身近であり、その行動や姿にはどこかロマンのようなものがあるでしょう。ここでは「旅鳥」と表現されたように渡り鳥の属性も大きいでしょう。そんな風情を感じさせる初連です。「冬も間近な」は事情あって出発が遅れたかな?越冬燕もいるくらいだから、各種いるのでしょう。2,3連が再度出て来るのに注目しましょう。燕と夕陽が織りなす黒と赤の幻想を感じます。時間も流れていく。文中「もう二度と」「終わりのない旅路」と「いつかまたおまえに遭いたい」「またおまえに逢える日」。一見、矛盾するのですが、僕はそうは思いません。僕の勝手な解釈によれば、渡り鳥の致死率の高さです。確率の問題です。”今そこにいる、その1羽の個体(燕)=おまえ“は無事に再び「僕」の処に戻るかどうか?それはわからない。その1羽は確率を乗り越える必要があります。僕はそのように読んで感じ入ったわけです。その生死は燕にも「僕」にもわからない。だからこそ願い、それは「果てしなく遠い約束」と記された、僕はそう思っています。
今回から評価になります。余力と期待を見て佳作二歩前で。


3 水野耕助さん 「私はここに」 7/1

冒頭佳作。
言葉を最大限に節約して、逆にそこから深いものを探り出そう、そんな姿勢を感じました。少し実験的と言ってもいいくらいです。2つの言葉に注目します。「なかったことに」VS「書き進める手」。
両者の間に「VS」を入れたのは、これは一種の戦いであると思えるからです。襲ってくる前者、迎え撃つ後者。表現が不穏ならば、前者的にならない為に、それを堰き止める為に、後者を以ってする、と言い直してもいいでしょう。この詩の神髄のように思います。そのことを、冒頭書いた「節約~深い」が方法論となって実現させている、と見ます。「何かを志す者、かくあるべし」―そんな気さえしてきます。(音楽でも、絵画でも、何でもいいんですが、たとえば)「なんで詩を書くの?」と聞かれたとします。答えるのは至難ですが、案外そうでもない。この詩をコピーして「これです」と言えば、
80%以上当たってる、と僕はそう考えています。そんな詩ですね。


4 akkoさん 「小さな世界」 7/1 初めてのかたなので、今回は感想のみ書きます。

よろしくお願い致します。
一種、不思議な詩です。小さな世界=スモールワールドとは相対的であり感受性の問題であり詩にあっては喩となります。この詩の主人公は小さな世界と把握することに反発しているように僕には思えます。「言うのなら~きてよ、きてよ~~探しに行く」を読むと、そんな気になります。
文中「彼」が何であるかを想像することは楽しみでもあり苦痛でもあります。最後の3行はスモールワールドに対する感慨か、どうか?謎を引きずりながらも最終セリフが印象に残ります。この詩は、この語調に集約されそうな気がします。また書いてみてください。


5 上田 一眞さん 「ようちゃん」 7/1 初めてのかたなので、今回は感想のみ書きます。

よろしくお願い致します。伽耶―最初、読めませんでした。調べた結果「かや」。さらに調べると「1世紀~6世紀に朝鮮半島中南部に存在した国」とあります。いわゆる、高句麗・新羅・百済などと、ワンセットで括られる国々の隣国でした。日本府のあった任那(みまな)と同じに理解してもよさそうです。しかしそれをそのまま、この詩に当てはめていいかどうかは大変難しいところです。登場する生き物も込み入って珍しいものばかりです。ようちゃんのほうが年上で「僕」を可愛がってくれたようだし「僕」もようちゃんを慕っていたのが窺えます。だから最後の感慨になるのでしょう。「伽耶の国」に注視し、額面通りに読むと、「僕とみんな」が日本人(当時 倭人))で「ようちゃん」が伽耶人で、当時の(1世紀~6世紀!)子供の様子を書いたもの、としか把握できませんでした。まあ、両国は近いし交流もあったようですし。もし、そうなら凄い設定になります。様子を見ましょう。また書いてみてください。


6 エイジさん 「風のそよぎ」 7/1

この詩だと「WIND」よりも「BREEZE」が似合いそう。そんなフィーリングですね。軽やかなオープンながらポイントだけは掴んでいる。あるある!そう思うことありますよ。初連のまとめもこれでいいでしょう。ところで「捕らわれる」はこの漢字じゃないと思いますがね。「捉われる」?僕もちょっと自信ないんで、詩のムードに合わせ「とらわれる」―ひらがなをお勧めしておきます。
2連で大きくとらえ、3連で身近にとらえる。風=詩人のイメージも持続されています。

想えばこの地球(ほし)に
風を添えたのは
抜群の演出だった

しゃれていて本質を掴んでいる。このあたりが、今のエイジさんなんだな。
4連では普遍が個別に降りてくる。ここで風は全てエイジさんのものになる。
透析は大変でしょうが、風がそよいで、心が和みますように。
明日、エイジさんに寄り添う風が吹きます、そよぎます。佳作です。


7 ロンタローさん 「失われた時の中で」 7/1

「失われた時」という場合、僕には2つの把握の仕方があって、まず、ひとつは単純に「失われた時=過去」。僕たちは毎日、時を失わせて、過去に送り込んで生きているわけですね。これをやっている限り生きているわけで、未来の時を失うのがすなわち死。もうひとつは、ある一定の時間の中で、自分の思考・行動・存在が無価値なことをしてしまった。あるいは無価値な事態に置かれてしまった。前者は自然的、後者は心理的・状況的と言えそうです。4連までは前者と思います。「あと何年失い続けるだろうか」は「あと何年生きられるだろうか」と同義のように思えます。一方、それ以降は後者。従って5連の「寄る辺なき~失われた存在」的な認識は今まで過ぎ去った時間の中での自己の虚無感を匂わせています。前者の流れの中での後者的な忸怩たる思いが伝わってきます。佳作で。


8 大杉 司さん 「眠り」 7/2

これは実話に基づくと思われます。
大杉さんの年齢枠を加味すると、母(父)上、あるいは祖母(父)様、といった感じでしょうか。
101歳といったご高齢。喜ばしく目出度いことではありますが、この詩は残念ながら、そうはならなかった。寝たきりに近いのかもしれない。今日が自分にとってどんなに素晴らしい日であるかもわからないのかもしれない。絶望ではないが、哀しみと隣り合わせの感慨を静かに淡々と述べています。やはり冒頭と最後が素晴らしい。中でも……。

しかしどうだろう

この言葉の重みはどうでしょう。この言葉の本来以上の磁場が与えられている。これだけシンプルな言葉に最大限、重要な価値を担わせている例はめったに出てきません。この言葉があったからこその、この詩です。もちろん佳作を。


9 ベルさん 「やさしさ」 7/3

松任谷由実(当時、荒井由実)の曲に「やさしさに包まれたなら」というのがあって、その歌詞を見ると“やさしさの供給元”が必ずしも明かされていないんですが、いい雰囲気を作っています。この詩にも似たようなところがあって、なるほど「キミ」(やさしさ君?)となってはいますが、特に実態を真剣に詮索する必要がないようにセットされてる気がしています。文字通り「ふわふわ」でいい。わからなくていい。もっと言うと「キミ」無くても読めそうです。最後だけは……、

今日もどこかにあるから
私も大丈夫
大丈夫

表記上のことをちょっと。「誰をもの心にも」はシンプルに「「誰の心にも」でいっこうに構わないです。

ただし、この詩はもう一説あって、この「キミ」は極めて特定な人間ではないか、ということです。
それでも読めます。(ただ、「今日もどこかにいるキミ」が、特定らしくなくて、少し引っかかる?)
まあ、どちらの説を取っても、「僕」「キミ」「あなた」「私」とたくさん出て来るんで統一、整理が必要かも? もしかすると複数、登場人物がいそうですが、そうならば、わかるように書いた方がいいですし、このサイズだと人称は絞るか、ひとつのほうがいいでしょう。
「大丈夫」がこれまた、シンプル&重要価値でいいですね。佳作一歩前を。


10 朝霧綾めさん 「いい夢」 7/3

ホント、夢って思い出せないですよね。(〇〇さんが出て来たけど、後はさっぱり……)なんてのが多いです。この詩の骨格として「いい夢見た→思い出せない→あきらめる」の流れですが、「帰り道」以降の書き方がいいですね。特に「遠ざかっていった~近づいていく」の夢の有りよう、一種の距離感のことです。入れ替わり立ち代わりの夢の期待度のようなものを感じますね。あとは指摘を少しだけ。2連です。顔を洗い、と、歯を磨き、はワンセットになるでしょうし、靴を履く、も二度出て来る。3、4連も要約できそう。(雨音さんの言う)引き算と要約を使うと、詩はぐっと引き締まる気はしますね。あと……、下記、ちょっとゴワッとします。

さらに思い出せないかすかにいらだちに→「かすかに」を「かすかな」に換える。
変わってしまいそうなのを

(又は……)
     ↓
さらに思い出せない
かすかに(な)いらだちに変わってしまいそうなのを

みたいな感覚でしょうかね。 佳作一歩前を。


評のおわりに。

運転免許の更新がやって来た。僕、優良運転者(それもそのはず、クルマ持ってないし!)
方向オンチだし運転得意じゃないから、もう返納しようかと思ったけど(もう一回、やっとく)で、
更新するこの夏。 では、また。

編集・削除(編集済: 2023年07月09日 13:34)

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