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スレッドNo.2454

介護の現実 3  Liszt

「『コロナの予防注射を受けろ』って?お前、わたしに何する気なの!」
「こっちはよかれと思って言ってるんじゃないか!
だいたい、副反応なんてめったに起きるもんじゃないよ
それに介護してるオレが外からウィルスを
持ってきてしまうことだって…」
「誰が何と言おうと、そんなもの絶対にごめんだね!」
「じゃぁもういい、勝手にしたら」

いつもこんな具合で
お互い気まずくなる
以前の母だったら
素直に予防注射を受けたのに…
寝たきりになってから
こちらのアドバイスは
めったに聞き入れてくれない
すっかり神経質になった上に
意固地で頑固で手に負えない

「まぁ難しく考えるなよ
しょせん、 なるようにしかならない」
そう慰めてくれたのは
親の介護では大先輩の従兄
「オレも親父とは喧嘩のしっぱなしさ
相手が老い先短いのを重々承知のはずなのに
ついつい意地の張り合いになって
大きな声を出してしまう…
でもなぁ、親の気持ちもわからんでもない
日に日に自分の身体が衰えていき
何事も思うにまかせない
このまま、あらがうことができずに
お迎えが来てしまうと思うと
いてもたってもいられないんだろう
焦る気持ちから ついつい
周りとぶつかってしまう
そんなところじゃないか」

「それなら なおさら
穏やかな日々を送らせてやらないといけないのに
いつのまにか売り言葉に買い言葉で
ギスギスしてしまう
寛容に接しようと思っても
さっぱり長つづきしないんだ」とわたし

「何もかもしょいこむことはないよ
オレなんか最近こう考えることにしてる…
毎日 親とああだの、こうだの
ひと悶着もふた悶着もしながらやっていくとする、
そうしたら いざ 親が死んだとき
喧嘩する相手がふっといなくなって
妙に気が抜けたような気がするだけで
あんまり『悲しい』とは感じないんじゃないかって…
きっと神様が少しでもオレたちの悲しさを和らげようとして
今から準備させてるんじゃないかってさ…」

何やらわかったような
わからないような話だけど
それでも聞いたときは、
もし神様のお計らいなら、と思って
少し気が楽になっていた
ところが…

つい先日、当の従兄から
伯父が亡くなった、と電話が来た
受話器の向こう側から
聞こえてくるのは
もう七十にもなろうという
従兄の あからさまな嗚咽の声…
「神様が悲しさを和らげようとして」
という従兄の説明も
これではどうにも説得力がない

やっぱり一筋縄ではいかない、
親子というものは…

編集・削除(編集済: 2023年07月20日 14:09)

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