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スレッドNo.2475

6月27日から6月29日までのご投稿分の感想と評です。  夏生

大変お待たせいたしました。
6月27日から6月29日のご投稿分の感想と評です。

「寂寞たる心象」  積 緋露雪さん

積 緋露雪さん、はじめまして!大変お待たせして失礼いたしました。
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「寂寞たる心象」の感想を送らせていただきます。

夏の眩しい季節。自然が元気に輝いてエネルギーに満ち溢れています。
その状況と反比例するように、主人公の心は「寂寞たる」もので。
冬の凍てついた寒さに震える心。殺風景な寂しさが広がる心と
現実の外気のあまりの違いにめまいをおぼえる。
それでも心の内部にいた方がよいと主人公は思っています。
>真綿で首を絞められるやうに圧迫する外部の息苦しさよりも
内部自由を選んだ私

無理に合わせたり、自分を押しころして行動するよりも
心の状態のままに、正直な自分でいたいという思いが
あるように感じました。それを悪癖と捉えながらも欠点とは
思わない。そこに魅力を感じました。
対照的な季節で表現され、旧仮名遣いを用いることで時代も超えた
人の心の複雑さ、ままならなさを表現した一篇だと思いました。



「笑顔は地球を救う」 喜太郎さん

喜太郎さん、大変お待たせして失礼いたしました。
今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「笑顔は地球を救う」の評を送らせていただきます。

笑顔の効能の連鎖が流れるように描かれています。
笑顔から心に花が咲くような、心地よさを感じました。
作り笑顔でもいいから、笑顔でいなさいと
母が言っていたことを思い出しました。
心からうれしいと思ったときの笑顔は自分では見えなくても
気持ちの良いもので、その笑顔を見た人もうれしさが伝わる。
心の状態によっては笑顔になれない時もありますが、だからこそ
口角を上げて、と思ったり。

「笑顔は地球を救う」という壮大なタイトルですが、実感として
わかります。誰かの笑顔が誰かの心を救う。
暗く嫌なことが多い世の中ですが、決してそれだけではないと
気づかせてくれる一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。



「さいころの唄」 鯖詰缶太郎さん

鯖詰缶太郎さん、大変お待たせして失礼いたしました。
今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「さいころの唄」の評を送らせていただきます。

音楽性が違うということで、浜辺にぽい、されてしまった
「ぼく」を拾ってくれたのは、他の音楽事務所の方でしょうか?
俗っぽい言葉がなく、それでも音楽業界の諸々を想像させてくれます。
れのんまっかーとにーの歌、面白いですね。(うみはバンドでしょうか?)
親しみやすい歌詞からどんな曲がついているのか、想像しながら楽しみました。
れのんまっかーとにーはロックスターになったのですね。
「ぼく」の満足げな顔を想像しました。
ユーモラスでいろいろ想像を巡らせてくれる一篇でした。
次回もご投稿お待ちしております。



「通り雨」 凰木さなさん

凰木さなさん、はじめまして!大変お待たせして失礼いたしました。
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「通り雨」の感想を送らせていただきます。

今年の夏も連日の猛暑で雨が恋しい、いや、乞うています。
東北や九州地方の大雨を分散してこちらにも降らすことは出来ないものか
うまい具合にバランスがとれたら、と本気で考えてしまうほど厳しい
状況です。
御作からつかの間の避暑を楽しめました。

>晴れた空から
雨が降る
粉の様にサラサラと

>立ち込める
アスファルトの匂い
花の潤う束の間に

この描写から温度、匂い、日の光を感じ、雨の様子が見えます。
素直な言葉と情景描写は、こちらの感覚をまっさらにして
疑似体験をさせてくれます。
通り雨が過ぎた後の日差しは強くても、少し熱が冷めて
潤った道は歩きやすいだろうと思いました。
風が強ければ涼を感じるでしょう。
つかの間の雨に救われたような心地になれる一篇でした。



「17」 山雀詩人さん

山雀詩人さん、大変お待たせして失礼いたしました。
今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「17」の評を送らせていただきます。

>傘をさすと安心する

シェルターに隠れているような
外界から守られているような
そんな気になる

同感です。傘という小さな屋根があると、雨だけでなく人の視線からも守られているような気がして、落ち着くことがあります。
主人公は傘の中で、誰にも気づかれたくない、振り向かないでほしいという気持ちを抱えて
進みます。共感すると同時にヒリヒリしたものを感じました。
主人公は自分をヒナに例えています。殻の中に守られるヒナは怖くてこわくて泣いています。雨よ、やまないで、と悲痛な叫びをあげながら。17歳の繊細な心と雨の音が重なり合う瞬間を見たような気がしました。
遠い過去の話ではなく、今も自分の中に「17歳のヒナ」がいる。共感より同感できるほど
近い存在として。読後もヒリヒリとしたものが残る一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。


「食む」 妻咲邦香さん

妻咲さん、大変お待たせして失礼いたしました。
今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「食む」の評を送らせていただきます。

小さな苗からその仕組みまで、視点の転換があります。
<知らずに生きていられたら
万人に愛されただろうか
と、知りすぎてしまったことの悔いなのか、好奇心によって
何か失ってしまったのか、想像が巡ります。

>悲しいだけでは泣かない
嬉しいだけでも笑わない

と、何気ない自然現象の中で、人の心のままならさを的確に表現されています。

<私は草を食んでいた

この草とは何か。野菜のような栄養豊富な物なかのか、栄養があると思い込んで
食べている味気ない何かなのか。

<あるものは無い
あったものはなくなる

<人は本気ですれ違う時
何も持ってはいない

避けられないものに関して、人は無防備になってしまう。
あるものはいつかなくなってしまう。
抗えない切なさを感じました。

>胃袋の中で生きる

<栄養にされてまでも、誰かのその体内で




命の強さを感じます。

小さな苗を植えて、やわらかい風に吹かれても
主人公は自分自身の見えなかった恐ろしさに怯えるだろうと
感じます。それはなぜか。儚いものを育てる気持ちと
壊してしまう衝動が同時にあるのではないか、と考えました。

<道は何処かにあった
私の歩けない道だ

主人公が生きにくさを感じながら、それを抱えて
仲良しな相手には
もう笑ってくれなくてもいいんだよ、と
教えます。

主人公の抱える孤独や強さ、生きにくさを感じても
それを憂うことなく、受け入れ、相手を思う。
小さな苗を植えたことが、主人公にとって大きな出来事であり
そこから自分自身と世の中を見つめていく流れがよかったです。
(あさって方向の解釈でしたら、すみません)
読むごとに惹きこまれていく。力のある一篇でした。
御作秀作とさせていただきます。



「おひたしの詩. 」えんじぇるさん

えんじぇるさん、はじめまして!
大変お待たせして失礼いたしました。
ご投稿くださりありがというございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「おひたしの詩.」の感想を送らせていただきます。

お皿の上のおひたしは、のリズミカルな繰り返し。ほうれんそうか、小松菜か。
おひたしになるまでの過程がテンポよく展開されて、楽しくなります。
収穫前でもお皿の上にのってるところは、成長過程を研究する映像を見ているようで
面白く感じました。
おひたしになる運命とわかっているのに、次はどうなる?次は?と気になって
リズムを追ってしまう。読み手のを上手に惹きこんでくれます。
いとしめやか、いとなよびやか、など古語を用いるところのユニークさ。
最後は大変美味しゅうございました、と満足げな感想で終わります。
軽快なリズムとテンポ、言葉の多様な使い方で読者を惹きこむ魅了的な一篇でした。



「正解をください」 紫陽花さん

紫陽花さん、大変お待たせして失礼いたしました。
今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「正解をください」の評を書かせていただきます。

主人公は、猫の視線、表情から今は亡き父親の存在を感じます。
それを恐れたり逆に恋しい気持ちになったりするのではなく
生前、父親に問われたことを思い出し、主人公の心はざわつきます。
正しい答え、というものが本当にあるのか。
父親が求める正しい答えがわからなくなったとき、あるいは
なんとなくわかってそこに合わせようとしてしまったとき、
主人公の心の中に、息苦しさや嫌悪感が生まれてしまうのではないか。
最終連、
<私は今日も正解を導き出そうと
猫の前で唇を噛みしめている

の部分から苦悶に満ちた主人公の姿が見えた気がしました。
正しさは時に暴力になってしまう、と何かで読んだことがあります。
正しさを強いてしまえば、相手を追い詰めてしまいます。
人それぞれの正しさ、価値観があって考え方があることを
忘れてしまう。それが思わぬ亀裂を生み、崩壊する原因になることも
少なくありません。
<私はまた何か問われているような
試されているような

と、心が動揺します。読み手も落ち着かない気持ちになります。
子どもの頃、正解しなければ帰ることが出来なかった日を思い出し
嫌な緊張感を感じました。

誰も悪くない、だからこそ苦しい。正しさを求められること
強いられることに苛立ちと、正解がわからない不安が
漂っています。
すっきりしない読後感ですが、それが魅力となっている一篇でした。
親子の思い出をいいお話にするのではなく、いまもなお
苦しい記憶として主人公の中にある。
そこに共感が生まれ読み手の心を動かしているように
感じました。
御作佳作とさせていただきます。



今回は手術後の体調の崩れがあり、評が大変遅くなってしまいました。
投稿者皆様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
暑い日が続いておりますので、皆様もどうかご自愛くださいませ。

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