2023/7/18(火)〜2023/7/20(木)の感想と評になります。 齋藤純二
間合い 積 緋露雪さん 7/18
積さんの作品は「和」の文化や精神を通して伝える構成で、いつも楽しませていただいています。今回は「間合い」ですね。
人と人との距離感についての作品になっています。「間合い」という尺度を使い、ユニークな視点で詩の作品が作られているというのは、有意義な作業になり読者にとっても興味深いものとなるでしょう。
最近でいえばSNSの記事などに、同調したり嫌がらせ的なコメントを発信して、発信者と受信者の距離感がほぼなくなっているというのは時代ですかね、そこで喜びがあったり、傷ついたりして。
そこでこちらの作品では世間の流れにそのまま乗ることへの警鐘から「間合い」という距離感の大切さを伝えているようです。安易に人との距離感を詰め、人間関係で悩まされるということも、頷ける内容となっています。親しき中にも礼儀あり、いや親しくなくても礼儀あり、だよなあ〜なんて思いながら拝読させていただきました。
茶室では刀はないが「間合い」がある。秩序あっての茶室、そこは平和でなければ茶を楽しむことなどできませんね。やはり世間も秩序がなければ荒れてしまうのでしょう。このくだりは距離感について上手く説明されています。
ちょっと余談なのですが、茶室へ入る時には千利休が取り入れた「にじり口」があるのですが、武士が刀を持ち込めないように小さな入り口は平和な空間を作るためにあり、こちらの作品にも説明がありますね。そこで、もうひとつお話がありまして……。世は戦国時代、武士はどこで襲われ斬られるかわからない。それは茶室でも同じ。なので武家茶道は、茶室へ入る時には必ず敷居に扇子を置き、戸で首を斬られぬように予防線を張った作法があります。利休から派生した千家や裏千家等は、扇子を敷居の手前に置きお辞儀をします。このように利休と武家の茶道が違うというのも面白いですね。ちなみに私は若い頃、武家茶道にどっぷりハマっていました。
とても興味深い視点で書かれ、楽しく拝見させていただきました。気になるのは、「日常での全的な共感からの繋がり」の根拠がなければ御法度ということから、「間合いの重要性」へもっていく場合、「全的に依存する甘え」の説明や具体的な話があれば全体がもっとしまると思いました。読者側からするとそこに隙間を感じて説得が弱くなる気がします。
かなり厳し目ですが「佳作一歩前」です。
待ち人 喜太郎さん 7/18
あなたへの思いを、自分が花になって待つというイマジネーションが、拝読しながら浮かんでくる映像とマッチしていい感じで表現されています。もうあなたの気持ちが私には向いていない、という雰囲気を伝えながらどうにか振り向いて欲しい気持ちもひしひしと伝わってきます。構成と流れもいいですね。
ただ、一読した時に「これは佳作だ」とすぐに思ったのですが、ちょっと推敲が足らなかったですかね。評価は「佳作一歩前」です。
まずは「花」と「木春菊」の言葉が被っているので、「木春菊」に統一されるとよいと思います。それと「花占いはしたくない/こんなに可愛い花なのに」のところは、可愛い花なのに花占いしたくない、どういうこと?となってしまいます。なので「花占いはしたくない/こんなに可愛い花だから」みたいにした方がよいでしょう。ご一考くださいませ。
薔薇 紫陽花さん 7/18
こちらの作品、もう表現が凄くて最高傑作じゃないですか!素晴らしい!
見事に「あなた」への思いと、ご自身が恨みつつもまだ愛してやまない心情が上手に表現されています。もう出だしから、詩人の言葉が読者に強いジャブとして打ち込んできます。「私を踏んだあの人」と。今度会った時に引っ掻くために爪を研いでいるという始まりからの、磨くことにより自分の爪の綺麗さに気づく。そして、あなたの好きな薔薇になろうと今日も爪を研ぐ、としめる。
言葉の過不足なく、情景が目に浮かび、語り部の心情が見事に伝わる作品に仕上がっています。こりゃ素晴らしい、ジーニアス!でも、男子の私にはちょっと怖かったです〜。
「佳作!!!」
介護の現実3 Lisztさん 7/19
「現実」。ここにあるエピソードからご自身の気持ち、親の気持ちを察するという作品から、介護のリアルが見えてきますね。藍音ななをさんも介護する作品を書かれていますが、心の葛藤が伝わりやすい作品というのがListzさんと共通しています。変わってしまった親をどのように納得、折り合いをつけようとしながら介護する奮闘記に、読者も他人ごとではない作品として読まれ、そこから共感、同じような立場の方には励ましが生まれることでしょう。
ご本人のお気持ちもご親戚さんのお気持ちも、それぞれに伝わってくる作品になってます。「オレなんか最近こう考えることにしてる……」というご親戚さんもなんとか現状を受け入れつつ、自分の気持ちをコントロールするために行き着いた考え方(もしかしたら騙し方)だったのでしょう。親がお亡くなりになり、悲しみがあふれ出す場面なんかは、拝読していまして辛さがとっても伝わってきました。親子は一筋縄ではいかない、それが親子なんですね。
ワクチンひとつでもたいへんかと思いますが、なにかいい方向へ向かう小さなエピソードでも生まれたりすることを願いつつ、感想とさせていただきました。
評価は「佳作」です。
空の名前 松本福広さん 7/19
初めまして松本さん。私、齋藤と申します。何卒、よろしくお願い申し上げます。今回は初回なので感想を書かせていただきます。
空色というとやはり青系の色をを思い浮かべますかね。その青を失った空、そこには人それぞれの悲しみを色づけて表現するかのように、空の色について読者へ語りかけながらの作品は上手く書かれています。あなたが思い描いている空の色は何色ですか、と問いかけて読者へ今の心情の色を想像させ含みある作品というのも素晴らしいです。
空がソラ、そしてもともと「空(から)」だから、銀色、黄金色といったように感情を色として入れられるのだろうなあ、なんて想像させるように、深みのある文体になっています。そして、「空の再生」とは「心の再生」だということを言いたかったのかもしれませんね。
思わず空を眺めて自分の心の色を見たくなってしまう作品です。ということで今、空を見ました。夜なのですが青い空と白い雲がバランスよく見え、ああ、今の私は心の調和がとれ作品の感想が書けているんだな(勝手な思い込みです)……。と、空に語りましたよ!
「乾いた慈しみの色をたたえた悲しさは/その人の手の熱を奪っていきます。」ここの表現が好きですね。癒されました。積もり積もった青、という表現もせつない感じでグッときますね。
ネットで検索「空の鳥」。おっと、この絵は見たことありますね。発想、感性がすごい絵。人間だったら「◯◯の人間」になるのだろう……
今回は読み応えのある作品をありがとうございました。またの松本さんの作品を楽しみにお待ちしております。次回から評価をつけさせていただきます。
。。。。。つぶやく。。。。。
いゃ〜ほんとに、直射日光が痛いと感じる暑さですね。みなさんお気をつけてください!涼しく、水分補給を!