朝顔 江里川 丘砥
朝顔が
壁に立てかけられた
緑色のネットや支柱に
つるを張り巡らせて
グリーンカーテンをつくっている
強い風のなかを
舞い踊るように揺れ
日を浴びて咲く
青紫の
柔らかな花
葉がひっくり返り
花の形が変わるほど
打ち付ける風に煽られても
飛ばされず
伸びていく
壁の上まで
伸びていく
つるが行き場を決められず
あっちへふらふら
こっちへふらふら
どれだけ風に流されても
ネットから離れ
倒れはしない
轟轟と上下左右に
揺さぶられる葉は
どれだけ風になびいても
茎から離れて
落ちはしない
破れそうなほど柔らかな花びらが
身を寄せ合うように縮こまり
閉じてしまいそうになっても
萼から離れて
飛んでいきはしない
つるとつるは絡まり合い
葉と葉は風に逆らわず
息を合わせて
同じ方向へ舞い上がる
花はつると葉に守られながら
青紫色の花びらを閉じて
ピンクの蕾の中に隠れ
ゆっくりと
今日の開花を
終えていく
大切な場所から
飛んでいかないように
風に逆らわず
なびくことで
生き延びる術を身につけた
ひと夏の命
ゆらりゆらり
夏が
終わるまで