高い目 理蝶
乱暴なカメラスイッチで街中のスクリーンに
女の裸が映し出されたのは
ちょうど凪の時間帯だった
LED粒子が意地悪く光って描像
西陽が右頬に熱く
俺は気づいたら
スマホのライトをつけそれを撮影していた
彼女は仏頂面 恥じらいはない
俺もならば恥じらいはない
頭をくすぐる微かな違和感
よくよく見るとそのスクリーンの
LEDの一つ一つは小さな小さな人間が発光していた
一人一人が曖昧な光を放ち
集まり彼女の裸を描いていた
俺はいつしか女の裸より
その発行する小さな人間を見つめていた
スマホのライトは光ったままただ茫然と
俺はふと空を見上げると
真っ赤な空に大きな目が!
まつ毛の長い大きな充血した目が!
やけに白っぽい小ぶりな太陽がその隣にある!
その目は俺をみていない
この場にいる誰もみていない
俺達が光らせたスマホのライツ
それらを総体として見つめている
俺達のライトも
あの目には女の裸に映るだろうか
しばらく瞬きもせずに
その目は俺達を見下ろしていた
大きな瞬きをした後
その目は確かに俺達を見た
その瞳孔をキュルリと絞り
俺達をしかと認識した
瞬間白い太陽の光が辺りを飲み込んだ…!
ライトのついたいくつものスマホだけが
街中の広場に落ちていた