砂丘にて
砂丘に捨て去ったはずの
腕時計を探すために
もう一度戻ってきた
この暑苦しい砂丘に
あなたがかつて贈ってくれた
腕時計はどこだろう
砂丘の向こうには
海がなみなみと横たわり
海鳥が舞って来ては
小さな砂埃をあげる
この砂丘で私は独りきり
私のもとを去ってしまった
あなたを想う
笑顔がまるで子どものように
無垢だったあなたを胸に抱くけど
その可愛らしさが今では憎い
あの腕時計はまだ動いているか
夏になると真っ青の空と
褐色の砂丘が鮮やかな
コントラストを成す
青空の下をひとり歩を進める
あなたとあの夏別れた
海辺にたどり着いたが
やはり誰もいない
海に向かって叫んでも
もう君には届かない
荒々しい海風が
砂を私の身体に浴びせて
舞っているだけ
あなたと別れた場所の辺りに
まだ動いている腕時計を見つけたよ
あなたと私の時を刻む
たった一人の生き証人
砂に半分埋もれていたよ