T・クルーズ 山雀詩人
夏の午後
今日も暑い いや熱い
冷房のこの部屋からも
灼熱ぶりが見てとれる
今日は風があるようだ
それもけっこう強い風
ベランダで洗濯物が泳いでる
いちばん風上に僕のTシャツ
そのすぐ後ろに君のTシャツ
ふたりぴったりくっついて
まるで僕が守ってるみたい
そうか
僕はいま戦ってるんだ
美女を背に
押し寄せる敵を相手に
まるで映画のヒーローだ
右を向き左を向いて
返す刀でまた右へ
ときどき押しこまれ
体勢を崩されつつも
命がけで君を守って
君も君で僕を信じて
いやぁ カッコいい
やりたかったんだ こんな役
現実はどうだろう
おりしも君は昼寝中
そのすやすやからすると
いちおう守れているのだろうか
あの〝T〟・クルーズほどではないにしろ
だってあいつタフだもんな
まだ戦ってるよ 暑い中
もう何テイク目なんだろう
でもカット!
ごめん T・クルーズさあ
君 カッコいいんだけど
そのTシャツ 裏返しだよ