夏宵オーケストラ
真夏の夕暮れ。
街を歩けば夏の声。
つんざく蝉のやがて消えゆく合唱。
鮮やかなオレンジに実ったホオズキの鉢を
持って歩く男性の姿。
しぼんだ朝顔は朝に向けてうつむき
夕顔は微笑んでいる。
風鈴が奏でる風の一つの音。
街もあかりを灯し始める。
車のヘッドライトとテールライトが
奏でる光の流線形。
夏空の蒼い音。
真昼の入道雲はもう見えない。
茜色に任せるままたなびく姿は
淡い煙のような雲。
涼しい時間帯で歩けば
汗ばむ私の体。
冷たい水とミネラル。ラムネ。
夏は一つの楽器じゃない。
ひとつひとつが儚い命のオーケストラ。
奏でる盛夏。
やがて晩夏が訪れ
消えゆく音に
音符の一つは結晶のように溶けて
今年の夏は終わるのを私たちは知っている。
1番星見える時、星の音するんでしょうか?