キミは透明に 江里川 丘砥
ぼくがキミを
否定してしまったら
どうぞこの心を
刺してください
キミはぼくなんかに
関わるべきじゃないから
月の満ち欠けも
潮の満ち引きも
作用できないほど
透きとおった心のキミを
否定するような人間に
ぼくは
なりたくなんかないよ
あの人はキミを
花のように飾りたいだけだよ
あいつは
蝶のように標本にして眺めたいだけだよ
ぼくがキミを
星のように崇めて
決して触れることのできない場所に
留めておきたいように
そしてキミは
いつしか透明になっていた
ぼくらの目に映らないように
手の届かないように
透明に
声も聞こえず
今は足音だけで
そこにいることが
かろうじてわかるけれど
そのうち
足音もたてなくなって
ぼくらにはわからなくなっても
変わらず
そこにいるんだろう
花のように揺らめいて
蝶のように蜜を吸い
星のように息を潜めて
ぼくらをわらっているんだろうな
そうやってキミは
透明になっていく
ひとり
無垢な場所で
誰にも
何にも
とらえられないキミになっていく
もう二度と見えないけれど
そこら中で
微笑んでいるのなら
安心してキミを思うよ
ぼくが否定することもできなくなるほど
透明になったキミを