紫陽花らしさ
私が産まれた日は雨だった
強くも弱くもない雨が
何の自己主張もしないで
ただ降っていた
そして私の名前は紫陽花
父からもらった名前だ
そこから私は父の願いを
うつした人形になった
きらきらと明るく輝くように
そんな願いを聞いたことがある
その人形は
人間社会に慣れてくると
ニックネームやあだ名を頂いた
やっぱりそこにも
誰かの願いがあったりする
ひーたん ひーちゃん
ひさちゃん ひー
なんて呼んでくる
その声は私に可愛いを願う
可愛い私は少し大変
気を遣うから
誰も傷つけないように
可愛い私はいつも笑顔で
頼まれごとは断らない
面白い話なんかもできる
ある時は
痩せすぎだからと
骸骨だとか骨だとか
私が意見を言わないからと
自己主張のない
透明すぎる私を
幽霊なんて呼ぶ人もいた
そんな人達の願いは
私に存在してても仕方ないけど
目立つなと願う
私はいつものように素直に
ただ転がる骨であったり
幽霊であったりするよう
振る舞う
骨も幽霊も息してるだけで
いいから楽だ
笑わなくていい 喋らなくていい
案外気に入ってたかもしれない
そんなお人形の紫陽花は
しばらくお母さんだとか
おばちゃんだとか呼ばれ
すっかり名前を忘れていた
でも名前なんてものは
呼ばれてなんぼのものらしく
昨日参加が決まった夏祭りで
さやちゃんという名前で
歌ってと頼まれた
紫陽花のさやちゃん期が始まった
今度の紫陽花さやちゃんは歌うたいらしい