物語の最後の一行 エイジ
時は何のためらいもなく過ぎて行く
季節は刻一刻と移ろって行く
紫陽花は梅雨の潤いに咲き
百合は力強くかつ上品に咲いた
時は何のためらいもなく過ぎて行く
永遠での眠りに向かって
亡き者よ 君等は今……
永遠に所有されているのか?
君等のあの情熱的な想念は
もはや里山の霧の如く消えたのか
私という物語の最後の行を何と括ろう
もう明日は来ないという日が来ても
明日への希望を謳うだろう
永遠での眠りに携える希望か
私という物語の最後の行を何と括ろう
僕のこの想念が消え失せる前に
煙突の煙の如く空に消えてなくなる前に
もう一度 朝の森を散歩したい
この世界を僕は大いに愛した
鶯のさえずりを 舞い踊る蝶を
絶え間なく働き続ける蟻を
公園に咲き誇るあの桜の花々を
ではこの詩の最後の行を何と括る
もう一度でいいから
あの朝焼けの時を過ごしたかった
もう一度でいいから
あの希望の日の出を見たかった
もう一度でいいから……