杖 喜太郎
昔のこと
私は両手を地につき
私は両膝も地につき
多くの助けの中に生きていた
やがて立ち上がり大地を両の足で踏み締め
空を見上げて夢や希望に心包まれた
だが年月は残酷なまでに早く過ぎゆき
持ちきれないほどの思い出と
数えきれないほどの後悔と懺悔
それでも懐かしむ時には微笑みを与えてくれた
やがて私の足腰は弱くなり杖が必要となった
杖を持ち 杖に頼り 杖と共に歩いている
まだまだ人様の肩を借りるまででは無い
こうして立ち止まり胸を張り空を見上げられる
まだまだ歩きたいのだ
一本増えた私の足は
今日もゴツゴツと力強い音を立てる