スキップするために生きている 朝霧綾め
スキップするために生きている
飛び跳ねて靴音を
たたんっと高く 響かすために
スキップするために生きている
昔赤ちゃんだった頃
歩けるようになったのも
きっとスキップするため
ようやく大きくなったのだ
この足を この身体を
自分が楽しいと思ったことに使わなくちゃ
祖母からもらったお小遣いで
先週 空色のスニーカーを買いに行った
スキップするために本を読む
ファンタジー小説を読んで
魔法の世界に遊ぶ
こんなに楽しい気分なら
本当に箒で空も飛べてしまいそう
スキップするために歌をうたう
自分の声はソプラノだったのだと
知って微笑んだりする
スキップするために涙は拭う
目が赤くならないようにそっと拭って
手早く前を向く
視界がぼやけて
つまずいたりしたら大変だ
成功した実業家の書いた本を読む
面白くない古い記憶からは
適当に目を背けて
スキップしたいから腹を立てる
でこぼこの地面ばかりだった
今日一日にため息をつく
スキップしたいから嫉妬する
さっき隣を通り過ぎた人は
明るい顔で歩いていた
私は肩を落として歩く
スキップどころか
歩くことさえ面倒くさい
そんな夜を通り過ぎる
朝が来る
顔を洗う
ふいに思いついて
空色のスニーカーを履いてみた
靴ひもを結ぶと
ぴたりと足に合わさる
外に出たい
ドアを開ける
飛び跳ねてスニーカーの靴音を
たたんっと鳴らそう
高く結んだポニーテールを
左右に揺らして
ワンピースの裾も
ふわふわなびかせて
スキップするために生きている
きっと私は
スキップしたくて生きているから