カマツカの夢 上田一眞
ひかりが溢れ砂が揺れる
広がる川底の砂地
群れる小魚
魚群の方を見渡すと
ひげを立て 餌とるカマツカが一匹
水面から三尺下
水の重みを確かめる小さなカマツカ
のろのろと泳いでいる
鈍臭いやつ
おまえの夢は何?
もしかして山女魚に姿を変えること
そうか…
それはとても切ないね
でも適わないよ
水がもっと冷たくて
綺麗じゃないと棲めないから
ニゴイと違って
山女魚はここには棲めないもの
それに一匹だけで淵に棲む
山女魚は孤独で寂しいよ
ぼくみたく訪ねてくるのいないから
カマツカよ
きみはこれでいいんだ
山女魚なんかにならなくていい
とてもとても魅力的
海なんか降らなくてもいいからね
川底はきみの王国だ
ギギやシマドジョウと遊んでて
水の仲間はいるからね
ドロブナもゴリもウグイもスッポンも
皆仲間
渓流では棲みづらい
鈍臭いやつばかりだな