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スレッドNo.2600

感想。 8/11~8/14 ご投稿分  三浦志郎  8/20

* 前回、お知らせ致しましたが、8月の三浦区間は感想のみで評価はお休みさせて頂きます。
ご不便をおかけしますが、ご賢察の上、よろしくお願い申し上げます。


1 妻咲邦香さん 「生活詩」 8/11

生活とは、ややもすれば一格低く見られがちですが、どっこい、そうであってはならない領域であります。そんな事情を、うまく“妻咲流”に仕上げた、と言えるでしょう。表現スタイルをごく大雑把に言ってしまうと次の2パターンです。

① 実生活に即した部分。
② ぶっ飛び発想・表現の部分。

② はすでにお馴染みですが、今回の面白さは①が、適宜、絶妙のポジションで入っていることでしょう。そして①②が比較的明確に区分される。それを見ておきたいです。
まず、初連、ショッキングですが、どこか飄々として可笑しみがある。「まったく、余計なことをしてくれた」の皮肉で、まずはひと呼吸。思考的部分は4連までで、後は事例提示が始まります。まあ、軽めで楽しいです。が、感想をそれだけで終わらせちゃいけない。今回、結果として出て来る詩行の難易度を下げている。その調整力は見ておきたいところです。技術論的な点がひとつあって、「ユニクロ~」以降最後までのポジションです。「この位置でいい?も少し考えたい?」といった感触無きにしもあらず。ただし「~ゾウガメ」の2行ケッサクなんで、これは最後に残したい。そのあたり、思案のしどころか?
はい、総括です。結論から言うと、賛否両論・好き嫌いが出やすいかもしれません。(まあ、極論すると世事の多くは好き嫌いで成り立ってるようなもんだけど)―いわく……

① 「思考部分は前半に少し。あとは単に事例羅列で終わっているのだ!」
② 「まあ、まあ、そう目くじら立てずに…。この詩はそういう詩であって、無いものねだりは酷というもの。楽しめばいいじゃない」

僕はあんまり難しいことわからないんで、②派ですかね。

アフターアワーズ。
本文が面白いのに、タイトルがちっとも面白くないのは何とかしてほしいですね。
あるいはこのままで、副題設置ではじける、とか。あくまで参考ですね。


2 上田 一眞さん 「詩ごころの財務諸表」 8/12

ああ、これは面白いですね。こういった詩は初めてですね。僕などが発想できないところから詩を持ってきています。冒頭の「●詩ごころの財務諸表」の各項目ですが、初見あるいは何気なく読んでしまうと、あまり気づかない。けれども、一歩踏み込んで読んでみると本文にちゃんと項目が含まれている。その通りに忠実に書いている、と言ってもいいほどです。技術論的に言えばそれがこの詩の“しかけ”であり、フィーリング的に言えばいぶし銀の魅力と言ってもいい。
最も印象深い点を感想代表例として挙げます。「負債=詩人たちの魂」―それに連なる詩行「同郷の詩人たち」~「詩情を借りあげる」です。僕たちは先達詩人たちから詩情を借りているでしょう。
それはその詩人を敬愛し影響を受けるといったことかもしれない。影響や伝統を借り受けて、研磨することによって、日々、負債を返済しているのかもしれない。結果、それ以降の項目も後の詩行によって明らかにされています。母のこと。自己の詩のあり様。最後は最も価値高い資産です。


3 鯖詰缶太郎さん 「8月」 8/12

事情や背景はわからないものの、8月にあったパーソナルな出来事を綴ったものかもしれない。
そんな推察です。ちょっと物騒な気味もあります。象徴的に書かれたものでしょう。全く違うかもしれませんが、包丁か何かを研いでいるシーンが僕の中で浮かび上がりました。そこでふと感じた思い。強く意識されるのは、やや変則的ながら「あなた」への思いのようです。案外、これは恋愛詩なのかもしれない。「あなた」への仮定以降の比喩がユニークで注目できます。終連がタイトルを感じさせると同時に、タイトルの付け方はこれで合っています。


4 大杉  司さん 「赤い夕焼け」 8/12

圧倒される子供と
遠吠えをする犬がいる

この詩は、上記フレーズがあるとないでは大違い。あって良かったあ~。
以降も記述の中で、引っ張っているのも良いのです。驚く子供の瞳や犬の声も聴こえてきそうです。
加えてまっ赤な夕焼けです。良好な詩的デフォルメです。ビジュアルです。それらと作者自身の心の絡め方です。比較的、濃厚な場面なんですが、風と風鈴を使い涼し気な演出も忘れない。
しゃれてますね。味濃い肉料理の後に爽やかデザート、といった感じ。「山火事」が出てきますが、これは全く偶然で、おりからのマウイ島火事と重なってしまったのは、この詩にとってちょっと気の毒な気がします。


5 水野耕助さん 「僕のブラックキャンパスシューズ」 8/12

まずは余談を。
「背中を押される」という表現がありますが、僕の印象では、ここ20年位の新顔の常套句です。
まさに、この詩はその表現そのもの、と思っています。さらに注目したいのは「押す」のは人だけではない。「物も押す」。これは経験上、僕も共感します。「進み続けろ」と言ったのが靴である点は極めて象徴的でしょう。極めて合目的的な詩なので、シンプルが良し、とは言えそうです。
さらに勝手に想像をたくましゅうすると―「ボロボロ」です。もう捨てられるのかもしれない。
「進み続けろ」は、シューズの最後の言葉―遺言だったのかもしれない。今まで歩み・進みを担った「物」の本意だったでしょう。終連は「そうですね」 (そうも言ってられないか……)


6 凰木 さなさん 「測量士」 8/12

はい、これはおもしろい。好きです。よく町や住宅地で二人一組で測量してるのを見かけますが、
そういった風景から発想されたのかもしれない。本来、叙景が上手いかたなので、今回はプラス
発想を飛ばして、ほのかにストーリー性も加味されてるかのようです。

測量計を担いで移動して
2人で相談しながら
首を傾げたり
頷いたりして

ここですよ、ここ。
「やってる本人たち、大まじめ」なんですが、まじめであればあるほど、微笑ましいというか、可愛いというか、かえって剽軽で可笑しみさえ湧いて来る。これはもう“おもしろまじめ”の境地到達でしょう。
アフターアワーズ。
これは全くの余談なんで読み捨ててください

彼らはなぜか さっきから
地球の方角・距離ばかり測量している

なんて行を加えると、一転ブラックユーモアになるかもしれない。(これは冗談です)


7 ゆーたさん 「砕けた月の欠片を瓶に詰めて」 8/12 初めてのかたなので、今回は感想を。

よろしくお願い致します。タイトルにみるようなイマジネーション、とても良いと思います。
詩行も想像力・幻想力に溢れています。心情背景として、朝を斥け、代わりに夜が意識中一杯に詰められています。その原因は、ほぼ全篇に存在する「きみ」が関与しているのは明らかなようです。もしかすると、これは「後朝の別れ」(きぬぎぬのわかれ)を言っているのかもしれない。だから朝を厭う。そんな想像もできそうなのです。つまるところ、これは星・月・夜の幻想性に包まれた恋愛詩ではないかとも解釈されるのです。基調となるのはエレジー(哀歌)といった感覚です。
表記上の「/」はどういった意図があるのか、付いてない行もあるが、その判断基準は?などは不明でした。様子を見ましょう。
また書いてみてください。


8 エイジさん 「物語の最後の一行」 8/13

なにやら小説のタイトルになりそうな感じですなー。
まず―最近のエイジさんに多い―時間の観念が掲げられます。その中にあって、それぞれながら確実にやって来る時間の終わり=死。その瞬間を“どう生きるか?”といった課題が文学に託され語られます。希望を綴り、自然と邂逅することを志します。終連はやや方面を変えてますが、それまでの大命題をより実践的に考えた、と解しましょうか。
他の読み手で、4連の「私~僕」の並列を奇異に思うかたがいるかもしれません。3連にも同じフレーズがありますが、これらは各連のサブタイトル的任務を負っています。気高くあらねばならない。従って「私」です。次に来る「僕」は普通巡行の詩行です。両者は用途もステータスも違うわけです。従って、これで全く問題なし。おそらくエイジさんもそんな風に意図されたことが容易に想像されるのです。最後にちょっと懸念を書いておきます。おせっかいを承知で書きます。技術ではなく心理です。最近、どうも詩の中で生き急いでいる気配があります。自然体でゆったりとお願いします。


9 じじいじじいさん 「いきたい」 8/13

少し以前、こういった意見広告がTVで流されていました。確か、捨てる人間がもの凄くきれいで感動的なセリフを言うのですが「騙されてはいけません。これは悪です!」みたいな字幕が流れます。そんな事態、風潮に材を取って、ストーリー性を呼び込んでいます。子ども向けでもあり、親御さんがところどころ、噛んで含めるように解説してあげれば、まずまず理解できるでしょう。そのあたりのさじ加減も良いと思うのです。じじいじじいさんにとって軽い新機軸。そんな気もして来ました。社会性と童話性がうまく出会いました。犬としての分別がまだ働かない、産まれて間もないのかもしれない。犬の悲哀の部分はよく考えられて書けていると思います。3連の訴え。5連の優しさが、この詩の読みの価値になるでしょう。ハッピーエンドでよかったです。


10 埼玉のさっちゃんさん 「想いを馳せる」 8/14

「夏になると~強く感じる」まで。 僕自身は8月6、9、15日など、戦争関連が思い浮かぶのですが、この詩は(その事も含めてか)もう少し古い時代を思い描いている気もします。あるいは、時代時代の流れを意識してのものかもしれません。昔も森羅万象や人は在って時だけが流れて今に至る。ホント、いにしえの人は何を思って見ていたか?この詩のように、とても興味のあるところです。(明日は生きているだろうか?)―今以上に命と隣り合わせだったことでしょう。そう考えると、この詩の終連、終句が大変価値あるものに思えてきます。以前よりも大人びた感覚があります。その調子で―。


11 akkoさん 「何度も呼び交わして…」 8/14

感想を書く前にカラスについて調べていました。

「カラスは一夫一婦制である」
「カラスは非常に頭がよく、鳴き声で仲間と情報伝達、意志疎通をする」

上記のふたつで、この詩の状況は大体説明がつきそうです。4連の解釈がポイントになりそうです。
オスが求愛行動をしたがメスが拒否したことでしょうか。「空のなかへ入ってしまった」も考えてみると、斬新ですが微妙な表現で、空ではない何処か―木の枝とか建物とか地面とか―にいたのか?
製作意図も含めて、何を描きたかったのかがよくわかりませんでした。何か書き足りてない印象を受けます。もう、2~3連書いて全体像を提示したほうがいいように思いました。


 
評のおわりに。

当方、老人性早寝早起き。毎朝4:30に起きてますが、8月も半ば過ぎると、明るくなるのが少しずつ遅くなるのがわかります。
兆しとは存外早い時期から、人知れず組み込まれるかのようです。 では、また。

編集・削除(編集済: 2023年08月20日 10:48)

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