残暑 凰木さな
風の音が渦を巻く
残暑の厳しい日曜の午後
蝉は激しく羽を振るわせ
八月の終わりを告げている
ベランダの洗濯物がひらめくと
物干し竿の上には小さな一組の男女
男は尖った靴とスパンコールの衣装を纏い
女は高いヒールと金の刺繍のドレスを身につけ
タンゴを踊っている
情熱のタンゴ
細い物干し竿の上を
気にする事もなく鮮やかに
二人が踊ると太陽の光が衣装に反射し
物干し竿の上はキラキラと光る
前後左右に体の向きを変え
物干し竿の端から端へと
キラキラと輝きながら
軽快なステップを刻んでいる
まだ暑い
八月の終わり日曜の午後