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スレッドNo.2612

自然の摂理のように

言葉が出てこないほどに
こころが枯れてしまったのなら
今は世界からにげていよう

明日のことも考えられない
昨日を思い出したくもない
今だけで精一杯なら
にげていよう
逃げるという言葉からも
にげていよう

そうやって
一歩も外に出ず
カーテンも開けず
昼夜もわからないまま
何日経ったかも知らず
過ぎていく時間を気にも止めず
誰にも会わず
世の中で何が起こっているかも知らずに
ただ来る日を消化していたら

だんだんと
お腹が空いてきた
着替えたくなった
お風呂に入りたくなった
空気を入れ替えたくなった
外の世界にはまだ出ていけそうにない
人に会いたいとも思えないけれど
なせだろう
ふと
空を見たくなった

  空はいいよな
  何も考えずに
  そこにいられて
  ぼくは
  何者にもなれやしなかったよ
  こんなに絶えず
  考えているのに
  落ちぶれたままだ
 
  何にも考えなかったら
  空みたいになれるかな
  空〈くう〉を説いたのは誰だったっけ
  ぼくには無理だろうな
   考えるいきものだもの
     あれこれと思い悩んで
        たくさん詰め込んで
             パンクして
  ある日
    とつぜん
        動けなくなる
           いきものだもの

  ぷつん と糸が切れ
  動けなくなってから
  幾日過ぎたのだろう
  気づけばいつも
  また同じ部屋 同じ布団で寝ている
  もう何年も
  この調子の繰り返し
  だけど どうしても
  人生を
  諦めきれないような
  気持ちに
  なってしまうんだ
  

ぼくが立ち止まっていても
山の色や
聴こえる生き物の鳴き声は変わる
外気も
夜空の星も
街並みも
人も
少しずつ変わっていく

ぼくがいなくても
どうってことない世界に
虚しく取り残されたまま
生きていることも虚しい
そう呟いたら
強い風が吹いた

地球が
大きなため息を
ぼくに向かって
ついたような気がした

ぼくがいなくても
まわる世界のなかで
特別な何かはしていないけれど
呼吸をつづけていた
それが
ぼくが世界とまわるために
唯一必要なことだった
それなのに
どうしてそんなに落ち込んでいるのかと
あの風は言った気がしたんだ

窓を開けて
外気を吸い込む
夜の空気が
ぼくに流れ込んで
夜がぼくの呼吸を
受け止めてくれた

星が綺麗だ
まだ人には会えそうもない

けれども
ぼくは
ここで
世界のなかで
まわっているよ
そうして
また歩きだそうとしてしまう
転んで擦りむいてもまた
ぼくは
そういういきものなのだろう
まるで
自然の摂理のように

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