息子と話したい母 紫陽花
息子は世間一般にもれず
思春期と反抗期を無事迎えている
学校にも毎日行き部活に汗を流し
父母祖父母健在の中
思春期と反抗期というものを
謳歌している
母の話は基本無視だ
勿論返事はない
ただ様子を見ると
首を縦に振っていたり
横に振っていたりする
ご飯も気に入らないおかずは拒否
もう私も何も言わず
見守り活動を続けている
2年ほど経っただろうか
その中でもたまに
何か聞かれるたまにそんな瞬間もあり
ああよかったと私は少し安心もしていた
そんな中私の終わりは
ある日突然やってきた
アレクサという
黒くて丸い機械がやってきた
息子が聞けば何でも答えてくれる
朝だって正確に起こしてくれる
歌だって歌ってくれる
天気も教えてくれる
ついに息子は帰るなり
アレクサ!ただいま!と
いうようになり
風呂とトイレ以外はずっと
アレクサと会話をしている
そして私は
アレクサに母としての
コミュニケーション機能を
今日も奪われている
私には洗濯と炊事と掃除だけが
機能として残った
母なんてのも家庭の
システムのひとつにすぎない
その昔
機械は洗濯の手伝いをして
掃除の手伝いをして
炊事の手伝いをして
そんな日常が当たり前だった
だが
その日常はおとぎ話になり
アレクサは今後母になり
アレクサを作った人の思考で
この世は作り変えられる
きっとそうだ そうに違いない
だれかアレクサを壊してください
お願いします
私は息子と会話がしたいんです