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スレッドNo.2640

懐中時計  エイジ

その昔 一台の金庫が
とある小学校に寄贈された
金庫の寄贈者は中身について
何も告げず金庫を一台置いて
そのまま小学校を後にした

それから50年後 ある教諭が
ふと金庫の事を思い出した
他の教諭の意見も一致し
初めて金庫を開けてみることにした

ダイアル式の金庫で
誰も暗証番号を知らない
業者に頼んで開けてもらうことにした
業者が作業に取り掛かり始めて
2時間以上が経過した時
「開きました」 業者はそう言うと
ゆっくりゆっくりドアを開けて見せた

金庫の中には
一つの懐中時計が入っていただけだった
教諭の一人がおもむろに時計を手にした
すると時計はまだ動いていた
カッ カッ カッ と時を刻んでいる

彼はおもわず時計の時刻を確かめた
寸分も違わず時刻は現在の
正確な時刻を刻んでいた

50年前のあの頃の空気をそのまま封じ込めた
金庫が今の空気に開け放たれた
正確に今も時を刻み続ける懐中時計
金庫の中は永遠に通じる空洞だった
時計は無言で永遠の詩(うた)を詩っていた
ある暑い夏の日の午後だった

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