空回りの夏 朝霧綾め
空回り
私は今日も
空回り
嫌いなあいつに
回し蹴り しようとしたら
すてんと転んで
尻もちついた
みんなが笑う
すべり台の陰まで
急いで逃げて
わんわん泣いた
あいつは今日も
私の足がおそいことをからかったんだ
一年生よりおそいって
鬼ごっこではいつも私が
最初につかまって
あいつは
「またかよ、おせぇー」と言って
にやにや笑ってやがるんだ
膝小僧に涙が
ぽつぽつこぼれた
雨降って地固まる
人生万事塞翁が馬
わかっているけど
今がきらい
涙をぬぐう
汚れたズボンを
はたいて立ち上がる
戻ってみると
みんなは何事もなかったかのように
鬼ごっこの続き
誰が鬼かわからない
「誰が鬼なの?」
大声で聞いてみても
みんないそがしそうに走っているだけ
空回り
空回り
私は
空回り
みんなから目を背けて日陰で
水筒の麦茶を飲む
氷が
からんからんと鳴った