暑い暑い 夏 まるまる
暑くて暑くて あまりに暑くて
あの頃は夏が憎かった
夏は長かった
永遠に思える程 長かった
やりたい放題の暑さ
阻止しなければと立ち上がっても
どうすることのできるはずなく
じっと 怒っていた
たぶん湯気をたてて
今年も 暑い
体にまとわりつく 不快
汗をかくことが まず嫌だ
なのに今年は
笑っている 怒ってはいない
皮膚ごと夏を脱ぎ捨ててしまいたい
わけじゃない
憎かったはずの真夏の暑さを 今は
味わっている
変わったのは
「夏」への思い
どんなに暑い日も
一日は二十四時間であることを
承認
夏が終わるまでは夏のまま
秋が来るのはこの後で良い
夏に対して私は
少し優しくなっている
それは歳のせいと すんなり納得
暑さに鈍感になってきた
経年の諦めも手伝って
イライラすることも減ってきた
「歳のせい」 実は裏面がある
こっちの方が ずっと深刻
足早に夏が過ぎてしまうと
つられて私も走り出す
ゴールがどんどん近づいてきて
元気でいられる自分の距離が
どんどん短くなってしまう
急いで過ぎないで欲しい 夏
暑さは我慢すればいいから
涼しい顔さえしていれば
強がっていてもわからないから
暑い夏と共に一分一秒
ゆっくり歩んでいけるなら
ひと時ひとときを 大切にできる
通り過ぎていたものが見えて 聞こえて
私の時間は長くなる
いろんなことに気づくかもしれない
夏のこのつらい暑さには
実は大きな意味があった
私は夏に 試されていたんだ