妹よ… 上田一眞
妹よ おまえは生を受けたとき
ふくよかで愛らしく
何より美しい亜麻色の瞳をもっていた
おまえのことが大好きな兄ちゃんは
本当は一番好きなのに
皆から愛されてるおまえへの嫉妬から
よく意地悪をした
甘いパンを買ってきたときも
欲しがるおまえにつれなくして
ただ見せびらかすだけ
なんて悪い兄ちゃんだろう
おまえは10歳で母を亡くしたが
薔薇を愛する 美しい女に成長した
亜麻色の髪と大きな瞳で遠くを見つめる
おまえに皆が振り返った
兄ちゃんに 紹介しろよ妹を
と言った奴もいたんだよ
妹よ おまえが死病に取り憑かれたとき
兄ちゃんはほんとうに狼狽えた
意地悪兄ちゃんを許して欲しいと
悔悟の海で泳いだものだ
そして 死病の淵から甦れと真剣に祈った
おまえはこよなく花や歌を愛し
家族や友を優しく包み込む
こころ豊かな女だね
兄ちゃんはおまえの兄で誇らしい
だから慈愛の瞳で皆を見つめ
いつまでも健やかにいて欲しい
それが兄ちゃんのただ一つの願いだ
妹よ…