空の穴 山雀詩人
スズメがエサをついばんでいる
静かな朝の道ばたで
こんなところにエサがあるんだ
いいな
どこでもエサがあるって
木の実食べたり
花を吸ったり
お金なんかなくたって
ちゃんと生きていけるって
家もいらない
服もいらない
災害だって怖くない
地面が揺れたら飛べばいい
スズメはどこで死ぬんだろう
そういえば死骸を見たことがない
人知れぬ森で死ぬのか
空のかなたへ飛んでいき
そのまま消えてしまうのか
そうだ きっとそう
空のどこかに穴があって
そこへ入ると
どうもお疲れさまでした
金の孔雀の受付嬢が
ニコッと笑って迎えてくれて
ふわふわの雲のベッドで
文字どおり翼を休めて眠るんだ
いいな
やっぱりいい
もし生まれ変わるなら
絶対にスズメになろう
ほんとはオオルリか
キビタキがいいけど…
このまままっすぐに進んだら
たぶんスズメは逃げるだろう
私は道路のふちを通って迂回
だいじょうぶかな 振りむくと
スズメは逃げることなく
依然エサをついばんでいる
別にお礼を言うでもなく
それでいい
だって君は自由だし
むしろお礼したいのは
ぼくのほうだし
私はまた前を向き
職場への道を急ぐ