夏を終えてゆく 江里川 丘砥
ツクツクホーシの鳴く声が
夏休みの終わりを告げる
ゆううつと共鳴する
夏の暑さと共に
うだるように溶けていった
ぼくの夏休み
縁側に寝転んで空を見ていた
山と山の間にそびえ立つ
絵にかいたような積乱雲
黒く変わりはじめると
夕立の合図
充満する暑さを
一気にさらう雨が降る
ぼくが掴む夏のはしきれさえも
流してゆくように
何もかもを
かき消すような雨
ツクツクホーシの声も消える
雷鳴が轟き
家は地鳴りのように震え
膨らみゆく不安
電気を消して薄暗くなった部屋
コンクリートの上
はねる雨粒は
花火のように弾けてゆく
パっと上がる夕立
アスファルトから立ち上る湯気
むわむわと漂う雨の匂い
だんだんと
落ちてゆく日が
夕焼けの空と
夏の終わりをつれてくる
妙に明るい月夜へと変わる
月はぼくの顎を掴み
意地でも上を向かせてくる
雲の隙間から浮かび上がる夜空
深い青色は
この間訪れた夜の海のように
ゆううつごと吸い込んでゆく
静かに
夏を
終えてゆく