グレーテルその後 紫陽花
魔女をかまどにくべてしまった後
グレーテルは気づいてしまった
私の仕事はこれだということに
魔女がすっかり燃えてしまった後
お兄ちゃんにも自分にも
笑顔が戻ったように
燃やすしかない魂は絶対にある
悪意のある思い込みの
塊になってしまった魔女は
どこにでもいる
そしてかまどは
燃やすことが大好きで
かまどとグレーテルは
意気投合した
あれから毎日グレーテルは
魔女を見つけては
順番に燃やしている
そんなかまどとグレーテルの
視線を私は最近感じている
年を重ねてきたせいか
秋が深まっていくせいか
私は寂しがり屋になり
若い子が妬ましく
私の私だけが信じている決まりを
若い子に世間に押し付けている
それに逆らう者が腹立たしい
水分が少なくなってきた体は
少し枯れ木のようだ
かまどにくべると よく燃えるだろう
今日も森でグレーテルが
魔女を燃やす
今日の魔女は誰だったのかな
もしかしたら
私だったのかもしれない
森の奥で白い細い煙が
すーっと上がっているのが見える