川縁にいた 理蝶
目を開けると
川縁に座っていた
夕陽が涼しいよ
それで僕は元いた場所から
遠く離れたことに気づく
この場所は少しずつずれている
僕の記憶に
まだいくばくか自信があるうちに
君の顔をメモ帳の端に思い出してみる
確か曽祖父は画家だったのに
君はいつまでも君じゃない
涼しい夕陽を背に歩く
白い影が伸びる
僕はずいぶん遠くへ来てしまった
そしてまたずいぶん遠くへしか
向かうことができないな
戻ることはできないな
多分この川を海まで辿れば
一つ区切りがつくのだろう
僕は僕であったこと
それすら忘れて溶けるのだろう
わかっていてなお
戻ることはできないな
生きたということは
こういうことなんだろうな