不在 紫陽花
いつものように
朝が来る
私の朝は5時から始まる
今はまだ薄暗い
太陽が見えない
7月には太陽に
私は力無くおはよう
とため息をついていたけど
この夏 裏の畑に出ては
作物を食い荒らしていた
あの大きな鼠
たまにしゅるんと
残像のように翻るしっぽを見ていた
今朝何か茶色いものが落ちている
鼠の死骸だ
動かないが毛並みは
つやつや 目も開いている
こちらを見ているようで
私は半日ほど放っておいた
夕方になるとそこには
鼠がいなかった
昨日は今年亡くなった
父の部屋の整理をしていた
一眼レフのカメラを見つけた
父のここ30年ほどが
詰め込まれていた
花 絵 畑 彫像 山 川
私の妹 妹の子 母
父には 精神疾患があり
好き嫌いが非常にはっきりしていた
父のカメラの中に
私だけが不在だった
恐らく父の中にも
私だけが不在だった
目を背ければ
何かはいなくなって
目を向ければ
何かはいる
そんな自然の流れの中
私も時々不在になる