ふる里の渚 上田一眞
夏はめぐりめぐって
再び ふる里の渚を歩く
十歳の夏
学友たちからシカトされ
独り渚で百の石を割った
彼らとの交流を絶つと誓ったあの日から
六十年の歳月が流れた
渚にて再び割る石
投擲した石の波紋が広がる
ひとつ
ふたつ
みっつ
それから 小さくなる波の輪に
枯れたこころを
投げ入れる
孤独を
投げ入れる
なにひとつ変わっていない
こころのあり様
誰もいない晩夏の海
とろりとした濃密な潮(うしお)に
身を浸し
言葉が枯れたぼくは
ただ静かに沐浴する