同心円
昨日確かであったことが
今日は わからなくなる
いや ほんの少し前のことも
もう わからない
ぬかるんだ道を やむなく歩いているような
しかも どこへ向かっているのかさえも
わからない
今朝、小雨のなかを 歩いていた
歩道の水たまりに 雨が落ちている
同心円が いくつも いくつも できては消え
できては消えて いる
どれも どれも 正確な円を描いている
不思議だ とても不思議だ
乱れなく 律儀に 執拗に
円は ひたすらあらわれては消えていく
しばらく それを見ていた私は
その規則正しさに 苛立ちを覚え
憎しみをさえ 抱きはじめていた