虹のスープ 妻咲邦香
友だちは欲しかったけど
仲良くなると怖いから駄目
正しいことは知っているけど
息が苦しくなるからお終い
薬じゃ治らない恋をした
自分で自分の手を握って
大丈夫だよと言って欲しかったし
言ってあげたかった
私が違う人だともっと良かった
もしくはただの凡人だったら
誰も困らせたくないから静かに笑ってる
あなたの涙にも少しばかり気付いてる
夜より確かなものはないけれど
昨日とはもう違ってる星の位置
月は相変わらず悪戯な目配せで
お湯を注いで始まる根菜のスープ
人生は笑っちゃうほど短い
世界の中心は何処かにあったけど
誰も彼も見失った
私の知ってる大事なものは
大事な人にも壊せない
壊せない、壊せない
私が壊すんだから
この手で、わたしが
こわすんだ、から
(虹は土から生まれた
(丈夫な根を張り巡らせて
(知らない街へと伸びていく
(そして誰かに収穫される
自分で自分に差し伸べる
その手をいつか振り払う
いつまでも変わらないもの
見つけられたら信じられる
色とりどりの根菜
虹は土に帰っていく
誰に言われなくともそうする
ただこれ以上
悲しい人を増やしたくないから
静かに笑って立っている
栄養の今少し足りないこの場所で
立派に育った虹のように