詩情 エイジ
僕たちを溶かす太陽が
大空でぼんやり漂い始めた十月
僕は待っている
金木製の香りと
ペパーミントの芳香を
ブレンドしたような匂いのする
あの愛おしいものが来るのを
僕は待っている
ランプの灯りのように
仄かな輝きを放つ
あの慈しむべきものを
まるで魔法のようで
手を振るとと消えてしまいそうな
ささやかな明かりのように
ぼんやりとしていて
ほの明るくて
とある詩人は書き残した
それはこの世のものでもあるけれど
彼岸の世界からやって来るものでもあると
煙突の煙のように
どうしても掴めなくて
秋の日の地面近くを吹く
風のようにみえないもので
部屋でじっと待っていなければ
出会う事はないと
僕は待っている
彼岸と此岸の間の
交信者になろうと
媒介になろうと
この何もない自室で
一夜まんじりともせずに
僕は待っている
あの愛しいものを
それは彼方(あっち)か 現世(こっち)か
魔法のような働きをする
ほんの少しの憂愁を湛えた
言葉の間から滲み出るものを