別離 久遠恭子
便箋に戻りたいと書いてみる
文字は滲んでよく読めなくなる
ぽたぽたと水滴が紙の上に落ちる
堕ちていくのは
私のこころ
瞼を手で覆って
見えないふりをする
さようならが近づいて
もう終わりという刹那
人は何を思う
あの人に会えなくなる
最期に手紙を書こうとしたけど無理みたい
連絡もないんだから
何もしようがない
30代半ばでまた独り身になる
BARに通ってみたけれど
私はもう若くなく
誰も相手をしてくれない
アパートに帰って出来合いのおにぎりを食べて
枕に顔を埋めていることしか出来ない
世界はどんよりとしていて
私はとても小さいのだ
窓を開けると
街の喧騒が聞こえる
いつかまた蝶のように飛べるだろうか
そんなことを考えている