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スレッドNo.2855

秋のひととき 喜太郎

年老いた男性が座るベンチの横
車椅子に老婦人
秋晴れの下
老婦人のズレかけた膝掛けを
ゆっくりと正面に周り直す年老いた男性
婦人を見上げる男性が
見つめながら声をかける
『寒くないかい?』
婦人の笑顔が優しさに満ち溢れ
男性の笑顔が愛しさに満ち溢れている
男性は水筒を取り出すと
カップに注ぐ
カップからの湯気が白く
それをそっと婦人に渡す
男性の膝は地についたまま
婦人の膝に男性の手が置かれていて
二人を秋の日差しが
木々の間からキラキラと照らしていて
まるでお姫様にプロポーズしている王子様の様
そこだけがゆっくりと時間が流れている
僕は隣のベンチに座っていて
その隣にはウトウトと肩に寄りかかる彼女が
そっと彼女の頭に右頬を当ててみた
彼女の髪の香り
ここも時間が少しだけゆっくり流れている気がした

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