標的 小林大鬼
男達に捕らえられた犯人は
影の薄い眼鏡の男だった
道に転がる手製の改造銃
狙撃の瞬間白煙とともに
花火のような二発の破裂音
混乱する駅前の遊説現場
撃たれた元首相は心臓が止まり
道端に倒れて病院に運ばれたまま
二度とこの世に戻らなかった
犯人の動機は悲しい境遇と運命に
翻弄された不可解な増幅された怨み
無謀な暗殺計画は男を堕天使に変えて
非情な狙撃手として標的を付け狙う
目的が達成された時に
不幸にも男は時の人となる
令和の最悪な暗殺者として刻まれる
元首相は死と引き換えに
日本の偉大な人となる
襲撃された祖父の運命をなぞるように
世界は希望を失い涙に暮れて
栄誉と感謝に包まれる
標的はまた新たに変わる
無責任な多数の声と憶測が
事件の行方を捻じ曲げる