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スレッドNo.2873

プラネタリウム  秋さやか

秋の空気を纏った人々が
ぞろぞろと
吸い込まれていく

プラネタリウムの場内

投影機を取り囲んだ席の
どこが特等席かわからず
心許ない気持ちのまま
みな散り散りに腰をおろしてゆく

丸天井の
無機質な白を見上げる
瞳の無垢さ

子供は少し大人びて
大人は少し子供に戻って
待ちわびている

日常の眠るとき

ふっとこぼれた
溜息とともに照明が消え
浮かび上がってくる
いつかの空

早送りされてしまう
夕暮れの寂しさを
見つめながら
居場所は心地よく見失われてゆく

そうしてふわりと放り出される
数多の星のなか

解説員の
ゆったりとした声は

霧雨のように
しずかにしずかに
しみてくる

胸底は
どこまでも続いていく夜道に
繋がり

大昔のあなたを想像し
大昔のわたしを巡る

神々の物語は
わたしたちの欲や罪を引き受けて
燃えつづけるだろうか

星座をなぞる視線は
ペガススの翼に吸い込まれ
瞼の閉じ方を忘れそうになる

そのままなにもかもを忘れそうで
なにもかもを思い出しそうな
 
そのとき

傍らから聞こえてくる
見知らぬ人のいびき

なんて安らかな震え
なんて微笑ましい響き

ふぅと
ふたたびついた溜息が合図のように
パッと照明が灯される

浮かび上がってくる
あたたかく重たげな体
弓も槍も持たない無防備な

けれどもまだ
どこかで星の瞬きを感じながら

静かに立ち上がると
人々は少しやわらいだ影を連れて
また日常へと
溶けてゆく

編集・削除(編集済: 2023年10月17日 18:34)

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