月旅行 久遠恭子
月面宙返り
ふわふわと無重力を楽しんで
月旅行に行くことに決めたのはただの気まぐれ
一生懸命働いて稼いだお金を一番有意義に使える方法
月に行くなんて一生ないだろうからという単純な理由
ロケットに乗って宇宙船の中
身体が軽くなっていく
身体が浮くという感覚が宇宙では当たり前のこと
私は普段は地球に暮らしていて
コンクリートと靴とが重力によって引っ付いている
その不思議さが今は分かる
どっちが本当なのかな?
世の中で生きていると
そういうことを考える場面によく会う
たぶんどちらも正解で
それはきっと状況で変わるだけ
家にいる時も宇宙や空のこと
思い巡らしていた
太陽が窓辺を照らす
そのことさえも
私にはとても不思議
光の温度を身体に感じて
両手を上げて伸びをして気持ちよさを確かめる
そんなことが私達の普通で
だけど本当は不思議なことだと
たまに考える
日向で犬が寝そべっている
何食わぬ顔をしているけれど
犬は本能で何か重要なことを知っているのかもしれない
宙に浮きながら
この世界の不思議を味わう
ふわふわ漂っていると
地球がとても恋しい