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スレッドNo.292

『目印のない悪夢』  雨宮800

太陽が傾いていく 沈む夕日 影は遠く伸びていく
草木が風に吹かれている 聴こえてくる月の音楽
列をなして笛を吹く音楽隊 夜になると魚は
アスファルトから顔を出し 街へとくりだす
そのたびに地面は大きく揺れ 
街はすばらしいスピードで崩壊していく

 枯れた花のゲートが重く開かれ
 砂の粒だけで満たされた空間を
 この世でたった一人、ただ歩く
 目の前の思い出が、消えていく
 あなたに渡すはずだったブーケ
 今はもう水面にただよっている

 ただ生きていたいと願っただけなのに
 世界は美しいと信じていたかっただけなのに
 「実際、わたしの魂は歌うことをやめ、諦観することでしか
  わたし自身を守れないことをわたしは悟っていたが、そのことによって、
  わたしの魂はしだいにわたしの体を離れ、目印のない悪夢へと溺れたのであり、
  五感を刺激するすべてがわたしを殺したのである」

自分の息の音で目覚める
瞼にこびりついた悪夢の跡
耳に流れ、髪に染みついた涙
またなにかを失った気がする
また一つずつ言葉を忘れていく
光の中を泳いでいるみたい
すべてが遠のいていく
そうしてまた朝がくる

編集・削除(編集済: 2022年07月15日 00:12)

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