やい、はし 山雀詩人
カタカタカタ
カタカタカタ
ぼくが歩くと
カバンが笑う
カタカタカタ
カタカタカタ
カバンの中で
はしが笑う
いったい何がおかしくって
はしはこんなにも笑うんだ
はしははしの箱の中で
おとなしくしてりゃいいものを
だいだいはしが笑うなんて
そんな話聞いたことがない
さんざん人に笑われてきたが
まさかはしにまで笑われようとは
やい、はし
笑うんじゃない
俺はおまえなんぞに笑われるほど
まだまだ落ちぶれちゃいないんだ
その証拠にほら
ちゃんとこうして歩いてる
こんなさびしい夜道を毎日
ひとりぼっちでもめげずに
確かに俺ははしはマイはし
人が使ったはしは使えず
だから毎朝出かけるときは
昼夜予備の三はし持参
ってなくらいの人間ぎらい
それでもこんなひとりっきりで
街灯さえもまれな家路たどれば
つい寂しくもなり人恋しくもなり
そんな自分がおかしくもなり
脳ももうおかしくなって
ここは世界のはしのはし
ぼくがぼくを笑いだす
ゲラゲラゲラ
カタカタカタ
ゲラゲラゲラ
カタカタカタ