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スレッドNo.2943

感想と評 10/20~10/23 ご投稿分  三浦志郎  10/28

お先に失礼致します。


1 妻咲邦香さん 「天敵」 10/20

これは僕の勝手な想像ですが、ふとした事から「天敵」という言葉に出くわした。(詩のタイトルにしたら面白いんじゃないか?)―繰り返します、勝手な想像です。人によりますが、僕の場合はそれで詩が成立する%は低いんですが、そこは、それ、妻咲さんです。想像を縦横に馳せることができるわけです。この詩が含む情報を整理します。

話者……ONLY枝。 木苺にとってNOT天敵。
木苺のすぐ隣で、呟きながらわずかに触れる。

内容はこれだけの事なんですがね。ただ単に木苺と隣り合わせの枝で読むのか、それとも、隠喩というか、寓話的というか、またまた僕の勝手な解釈では、ある種の人間関係―見知らぬ者同士がたまたま隣合わせたとか、そんな寓話か?そう見ていくと「あなたの天敵じゃありませんよ」が「けっして怪しい者ではありませんよ」に読めてくるから、魔訶不思議。案外、太陽が思わぬクセ者ではないか?……などなど。解釈の分かれ目はありそうです。まあ、いつもの妻咲流ではあるわけです。いつもとちょっと違うのは短めなのと、ちょっとライト感覚。特筆しておきたいのは、童話的味わいがあるのが新し目。佳作半歩前で。


2 司 龍之介さん 「疲れたら飛んじまえ」 10/20

人間、疲れたらどうするか?真っ先に思い浮かぶのは、「休息する、睡眠をとる」などですが、
「飛んじまえ」とは! もちろんこれは詩の世界のお話しであり、そこはそれ、表現の妙味ですね。
宇宙とか神様とか、世界を広く取っているのもなかなかおもしろいです。
そして、この詩の重要なところは、自分じゃない。ひたすら相手に向かって投げかけています。
相手は恋人とか、それに近い存在でしょう。そう考えるとこれはLOVE SONGとも取れそうで、
SONGといえば、この詩、楽曲の詞にも向いてそうです。形式を作っているせいもあるでしょう。
「飛んじまえ」とあるからロックンロールやJ―POPが似合いそうです。

A→B→A→B→(再度)A→コーダ(終連)。 はい、ぴったりハマります。

コーダ部は終連。この詩の全てを受けての結論でしょうね。終行は1行空けて独立連でも可です。甘め佳作を。

*コーダ……楽曲に独立的追加的に設けられる終結部分。


3 久遠恭子さん 「カモミールの白い花に寄せて」 10/20

カモミール……マーガレットに似てるかな? 可憐でありハーブティーや薬用にもなる有用な花なんですね。僕は言葉の響きが好きなんです。そんな花から導かれる父との思い出。
カモミールがニコニコとした父の笑顔を引き出したのですね。まさに薬草でしょう。
5連目がいいですね。それと「我儘な父だったけど」。とても正直に書かれています。でも僕はそれでいいと思っています。だからこそ終連が誠実に生きて来ると思っています。
久遠さん、一歩前進の一歩前で。 あっ十年前だったんですね。久遠さんの事情にもよりますが、
時期は書かず、か、ぼかしておいてもいいと思う。あとタイトルは「カモミール」だけでも、より詩的かも?


4  晶子さん 「夢」 10/20

この詩がややこしいのは「君・私・あなた・僕」が総出になって出て来るんです。少し整理しましょう。A(語り手)とB(相手)のダイアログでしょうね。
1連……2行目までがAの独白。ここの「君」はBの事。それ以降はBの直接的セリフ。中の「あなた」はA。「私」はB。
2連……Aの直接的セリフ。「僕」はA。「君」はB。
3連……ALL、Bの直接的セリフ。
4連……ALL、A。ただしここはセリフというよりもト書き的?

これで読んでみます。解釈係数としての「夢」を加味します。結論!具体的には全くわかりません(笑)。ただ、多少察することはできます。結論!悪夢を見ている。Bは初連と3連でしきりに帰りたがっている。「かりそめ」といった言葉も出て来る。そしてBはAを嫌悪しているさまが見て取れる。すなわち、Bは夢から醒めたいと願っている。いっぽうAは何者か?悪夢それ自体と捉えてもいいし、悪夢に登場する、ある特定人物かもしれない。とにかくAはBを捉えて離さない。ちょっとタチが悪い。そんな悪夢から逃げ出したい、というのがテーマでしょうか。

―以上が察したところです。「心臓・腸・内臓」の果たす役割が見えてきませんが、それらの言葉の肉感性と散見される表現で若干、セクシャルなものも感じさせるようです。
総評として、詩文自体のクオリティは問題ないんですが、この詩はどこか、自家発電ならぬ自家中毒を起こしてるような気がします。「夢」というひとつの詩世界の内部だけで、言葉がグルグル回って、あんまり外へは出て行かない。そんな気はします。まあ、夢自体がそういったものかもしれませんが。印象だけで言って申し訳ないんですが。うーん、佳作一歩前になるですねえ。


5 ベルさん 「栞」 10/20

まず初連です。思い出を栞に絡めて、このように語ります。なかなか気が利いて、しゃれていて、抒情味も感じました。全てはここから始まる、そんな印象もあるのです。5連から察すると、30~40歳代で、もちろん別々に生きている。ただ遠くながらお互い同じ時間を生きている、そんな事情でしょうか。日常の、美しいがありきたりのもの。そんな中にもかつての一瞬は蘇るのでしょう。
最後に「私にも気づいてほしい」とある。この一句は重要でしょう。僕の勝手な解釈によれば―、

私はこの詩のように思ってきました。だから、この同じ時間、あなたも私のことを、ふと気づいてください、思ってみてください、私が思っていたように―。

そんな願いの為に、この詩は生まれた気はするんですよ。 それぞれの生活があって、具体的に今後どうなる、という内容ではないんですが、ふと思ったことでしょう。そんな心理に佳作を。


6 上田一眞さん 「煉獄のニューギニア」 10/21

これは評価は外しておきましょう。
冒頭「父の実兄(伯父)の体験談だ」とあります。奇遇なので私事を書かせて頂きます。
僕の伯父もニューギニアにいて、そこで伯父は戦死しました。もちろん僕は会った事ありませんが、柔道着と軍服の両方の写真が残っています。位牌に「昭和18年1月21日 陸軍歩兵上等兵」とありました。俗に「ジャワは天国、ビルマは地獄、死んでも帰れぬニューギニア」と言われたそうです。文中でも触れられていますが、此処での死者は戦闘よりも飢餓と病気のほうが断然多かったようです。人肉食もあったと伝えられています。この詩は戦う以前の食糧問題がいかに深刻であったかが、よく活写されています。兵站を軽んじた上層部のツケが全て兵士に負わされた悲惨が痛い程よくわかります。対して米軍は専門の調理班がいて食料は過不足なく行き渡ったそうです。特別の日にはケーキも出たとか。思考差歴然。国力差歴然。「生存率一割未満」も事実です。伯父上がその一割に入れたことは奇跡と言っていい強運だと思います。不幸中の幸いです。
文中「日本の二倍以上」は初めて知りました。当時の軍部はホントにこんな処を獲ろうと思ったんでしょうか?狂気としか思えないですね。


7 エイジさん 「音楽の言葉」 10/21

音楽を中心に据えて、言葉と絵画への想像。身も蓋もないことを言ってしまうと三者は全く以って非なるもの。そこはそれ、詩の世界です。三者を「もし」=想像で繋いで、上手く詩の扉を開けています。詩への予感を感じさせます。2連ではさらに一歩進んで、音楽は感情世界に分け入っていきます。愛する人のみならず、語り手の音楽は自然の恵みとも同化しようとしています。甘め佳作を。
ここからは僕からのささやかなリクエストになります。音楽を愛し詩を愛する人の、せっかくの作品なので、本作は全て肯定型、賛歌型を以ってしたい。そうすると……
A……なぜご自分の音楽で語らないんですか?
B……詩なんて書いても無駄じゃないだろうか

―は、ちょっと後ろ向きな気もするんですよ。Bは単純削除でもいいでしょう。Aは連の終わり2行を活かす為に……

でも 言葉は不器用な時もある
時に 感情に追いつけない
君への言葉のもどかしさを
僕はピアノに託してみよう
たとえば
弾き始めのジョン・ルイス  (あくまで参考例)

もちろん従来通りでもいいですよ。 あと森へは「君」も連れて行ってあげてくださいな。

アフターアワーズ。
ジョン・ルイス。良い趣味をお持ちです。


8 緋露雪さん 「鏖  積」 10/23   

まずは「鏖」という漢字です。 オウと読み 「皆殺し」を意味する漢字ですね。恐ろしい字です。
この詩は昨今の世界を危惧し警鐘を鳴らすものとして、この漢字が使われたものと思います。
その主峰を成すのは「0か1か、 死か生か」=ALL OR NOTHING、食うか、食われるか、といった極限性を戦争が強いてくる。そしてそれは電脳の隆盛によって、より加速化されている現代である、こういった主旨と考えられます。しかし、それらはひとつの根として過去にもあった。文中によれば、たとえばそれはヒトラーの所業であり、「カラマーゾフの兄弟」での言葉でありキルケゴールの項目を援用して説明されます。この詩の個性とされるところは、やはり電脳の介在があると思います。予め人間に生まれつきセットされてしまう闘争心に現代的な爆薬を与えてしまったような……。折からのウクライナそしてイスラエル~ガザなどの戦乱を思うにつけ一般市民を巻き込み犠牲を強いるのは、例の漢字「鏖」の影がつきまとうものであります。そういった意味で、この詩は時宜を得ながらの問題提起と言う事ができます。最後のパートは問題を身近に降ろし象徴的に語られていると思います。「けっして対岸の火事ではない」ことのメッセージにも受け取れるでしょう。
僕個人の趣味としては、このパートは冒頭に持ってきて、それを受け継ぐ形で血肉化~理論展開しても可だと感じます。僕ならそうしたかも? 理由は詩文の重量の要素が多いと思います。船の重心に喩えると、トップヘヴィーな感じです。あと、前連とタッチが違うのも気になる。あくまで参考意見ですが。あと、このパートの3行目・5行目にミスタッチがありますので直しておいてください。緋露雪さんは、僕はまだ二度目なので、佳作一歩前からでお願いします。


評のおわりに。

緋露雪さんの詩の中に、ヒトラーの引用がありました。そこでちょっと思い出したのは、少し前、
「検証 ナチスは良いこともしたのか?」といったタイトルの本が少し話題になりました。非常にきわどく、
リスキーなテーマです。僕は読んでないので、その論旨に否とも応とも言えませんが、とても気になる本ではあります。

だいぶ季節が進みました。ついこの間まで冷房だったのに!朝夕は家でも職場でも暖房を使うようになりました。今年はちょっと早い気がします。夏は猛烈に暑かった。冬は猛烈に寒いのか?季節の寒暖が極端化するのでしょうか? そんな予感。 では、また。

編集・削除(編集済: 2023年10月28日 14:50)

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