7/5〜7/7ご投稿分の評と感想です。 井嶋りゅう
遅れてすみません。今回から、初めてのかたにもそうでないかたにも評をつけさせていただきます。(前回確認漏れがございまして大変失礼なことをしてしまいましたもので)どうぞご了承くださいませ。
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「日曜のバイオリン弾き」小林大鬼さん
小林大鬼さん、こんばんは。
この詩のいちばん素敵だったところは、後ろから2連目「〜映画のエンドロールのように遠ざかる」ですね。何でもない日曜の風景。役目を終えたビルを横目に人々で賑わっている様子がうかがえます。一人のバイオリン弾きがいました。そういう駅前の風景、たまにみかけますね。歌を歌っていたりパフォーマンスをしていたり。人だかりが出来てたりしますよね。でも、この時は誰も足を止めていなかったようです。バイオリン弾きだったからでしょうか。風景に溶け込んでいるようにも感じますが、異質のようにも感じます。エスカレーターをおりると、老舗の喫茶店、大判焼屋、と続きます。時代を切なく感じさせるような語り口で、バイオリン弾きがとても美しいです。小林さんは、自分の感情をいっさい書きませんが、いまこの時に抱えている感情で風景を見て描いてくださるので、じわじわと胸に迫るものを感じます。佳作一歩前でした。
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「ミルフィーユ」紫陽花さん
紫陽花さん、こんばんは。素敵なお名前ですね。
私はこの詩のラスト1行を読むまで、隠している恋心をあらわしているのだろうか、と思っていましたが、ああ、そうでしたか。ぐさっときて、うるっときました。とても切ない嘘なんですが、あたたかい嘘でもあるのかな、と思いました。
本当は技術的なこととか、そういうのをアドバイスしたほうが良いのでしょうけども、ラスト1行に至るまでのふんわりとした雰囲気から一転、一瞬で心を持っていかれまして、しばらく呆然といたしました。衝撃とも言えますし感動とも言えました。私はそのような作品を佳作とさせていただきたいと思います。
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「たからもの」プラネタリウムさん
プラネタリウムさん、こんばんは。
この詩は、宝を求めて旅立つ少年と少女を描いていて、野を越え山を越えとあるのでそのように読みながらも、これは、夢という宝に向かって生きていく子供たちの、本当は日常なのではないか、と思ったりしました。大人にけちをつけられ、それでも夢は叶えられるはず、と日々生きている姿なのではないか、と考えたりしました。どうして少年は亡くなったのでしょう。胸に抱いた夢が壊れて絶望してしまったのでしょうか。それとも?最後の2行なんですが、ここも詩に組み込まれてるんですよね?それともプラネタリウムさんのナレーション的な感じなんでしょうかね。確かに、少女にはこの先も物語があるはずです。そこをプラネタリウムさんが書いてみてください。
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「問い」秋冬さん
秋冬さん、こんばんは。
書き方をだいぶ工夫されていますね。一字下げの部分だけで読んでも、そうじゃないところだけで読んでも、読めてしまうのです。実は私もこのような書き方をした詩がありました(笑)この詩はコンビニで唐揚げ弁当を買うシーンから始まっているようです。毎日毎日同じルートで生きていると、私もこのような問いが出てくるのです。単調、だからでしょうか。堂々巡りの思考に陥って止まらなくなります。この詩は、募金もキーワードになっているようですね。お釣りを募金箱へ捨て、老人二人に缶チューハイを渡す、これも募金というくくりに入っているようです。イコールのように書かれていてここが微妙なんですけれども、自分で自分を皮肉る様子ととらえました。答えの出ない問いを問い続ける、という負の連鎖のような心情がよく描かれています。その心情と全く真逆の風景に出会うことを持ってくることの相乗効果だったと思います。佳作でした。
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「想い出の途中」埼玉のさっちゃんさん
埼玉のさっちゃんさん、こんばんは。今回の作品の前にひとつ、お伝えしたいことがありました。2021年3/10にご投稿された「口癖」という詩が、当時の私を大変励ましてくださったのです。とても明るい気持ちになったことを覚えています。どうもありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
さて、今回の作品ですね。私は「途中」という言葉が大好きです。完全に想い出になっていないものを思い出すとき、私もこのように思い出したいな、と思いました。この海沿いの風景だからでしょうか、案外客観性も感じられて、どっぷり浸かっている感がなく、涙も爽やかでした。でも切なさもきちんと伝わってきました。想い出は美しいままでとよく聞きますよね。でも、どんな出来事も完全に想い出になったときには、良いものになっているものだと信じています。瓶のソーダ、飲みたくなりました。
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「触れる」町田 愛さん
町田 愛さん、こんばんは。
何度も読んだのですが、この詩は一体何を指しているのだろう、と考え考えて。とても抽象的で、もしかしたら、ひとそれぞれ違うものなのかな、と考えたり、いや誰でもが持っている共通のものを指しているのかな、と思ってみたり。「此処に在る」という表現が引っかかりまして。有る、のではなく、在る、なんですね。もしかして、心のことかしら?とも思ったりしました。ですが、ごめんなさい、深く読み込むことが出来ませんでした。時間切れで申し訳ございませんでした。
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「怖い夢」galapa(滝本政博)さん
滝本政博さん、こんばんは。
改めまして。免許皆伝、おめでとうございました。
今回の詩もまた、良いですね。滝本さんの詩でした。5連目、7連目、8連目、が特に良いですね。「人生は怖い夢の続きなのか」そうなんだろうか、そうなのかもしれない、眠りという日々の死があるのだから。こういうふうに展開していく思考が滝本さんらしいのですよね。シリアル、レジ打ち、火事、ポルノ、と。どういうふうに繋がっていくのかと、およそ繋がりそうもない言葉たちが見事に「怖い夢」に集結していくこの流れが素晴らしいのです。もちろん佳作ですよね。
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「青いハンカチ」cofumiさん
cofumiさん、こんばんは。
この詩はとても良いですね。青いハンカチを持ってさえいれば、あんなことからもこんなことからも守られる。あんなこともこんなことも出来る。という例えが過不足なく描かれていて納得しました。最後は、青いハンカチだけにとどまらず、黄色いハンカチに思いを飛ばすところ、良かったですね。あの映画のあのシーンがよみがえりました。私にとって詩とは、決して共感だけではないのですが、この詩のように、自分を支えてくれるものを何かひとつ持っていることによって安心が得られる、というのはあると思います。それが青いハンカチだったり、香水だったり、ぬいぐるみだったり、一冊の詩集だったり。もし私だったら何だろう、と考えてみることも出来る、とても楽しい詩でした。佳作です。
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「腐食」SUIZさん
SUIZさん、こんばんは。
この詩はちょっと面白いです。異臭騒ぎの結果、鼠の死骸が発見され、それに対しての3つの考察がなかなか面白いのです。特に三つ目の「視認できない〜ブキミか」、ここにある、情念染みたという表現になるほどと思いました。発見されずに腐っていくのを、嗅覚に訴えかけると見るところもですね。二つ目の「根を棲処にするからネズミ〜」というのも、当て字みたいにして考えているところが面白いですね。この詩は、ここまでがとても良いです。あとは最後の一連ですね。少し詰め過ぎている感がありますね。内容は良いのでこの最後の一連だけ、もう少しほどいてわかりやすく書くことをおすすめします。とても面白い詩でした。
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先月、横浜詩人会のイベントに参加いたしました。随分久しぶりにお会いしたかたたちが沢山いて、変わらぬお元気さに安心しながら、楽しい時間をすごさせていただきました。そして、理事のお仕事大変お疲れ様でございました、三浦さん。