ふゆがれ 鯖詰缶太郎
花火が散るのは
どうにも
最後の 火花が
ぱらぱら
落ちて いくまでを
見るのが
どうにも
遠足ですから
だなんて
あなたには
言ったのですが
粋なひとこと
で あるな
と 思うのは
どうにも
中途半端に年取った
僕だけのようで あります
さむい季節に なりまして
そろそろ
手袋や マフラーでも
買いにいかなけりゃあ と
思いまして
自転車
風 きり
服屋に
行ったんですね
店番 しているのは
きつねの子供で
おやおや
母きつねは
今夜は
別の夜勤で 忙しいのかい と
思い
てきとうな
防寒具を 物色していました
子どもの きつねは
うとうと しながら
起きている時は
しっかりと
「いらっさーまさー」
と 大真面目に 言うのですが
あれでは
大人になった時の事が
おもいやられます
最近は
なんでもかんでも
手当たり次第
「だます」
のが 流行っているものですから
いくら
きつね とはいえ
そう けなげでは
先が おもいやられるな
と 思ってしまうものです
こんな 子どもの
きつねを 見て
はっぱを 紙幣だと
言い張ろうか
などと 思うのは
にんげん くらい
だろうなと
ふと 思いました
三百円 程度の
マフラーを 買い
レジで 精算しました
子どもの きつねは
僕を 化かすこと なく
きちん と
マフラーを
おりたたみ
僕に
マフラーを 渡してくれました
「いらっさーまさー」
頭を こくりとさげ
ねむそうな かおを
鼓舞するように
おおきな こえで
僕を おくりだすのでした
煙草を買うのを
忘れてしまうなんて
僕は
やはり
冬が そんなに好きではないようです
あなたに 御歳暮を
贈る 季節でしたね
今年は なにに
しましょうかね