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スレッドNo.3071

評、11/10~11/13、ご投稿分。  島 秀生

お待たせして、すみませんでした。

「ガザ地区」(敢えてハマスのものだとは言いたくない。イスラエルのものでもないけど)
の停戦がずっと続くといいなあーと、願ってやみません。


●朝霧綾めさん「微笑み」

初連の、靴音がいつもより高く響くところ。2連のカーディガンのボタンが一個ずつずれていて、留め直すところ。
こういう繊細な表現て、書ける人にしか書けなくて、私、朝霧さんのそういうところ好きなんだよね。ステキだと思います。
また、この2つの違和感は、3連以降に出現する、心の動揺の伏線ともなっています。

また、交際する二人の後ろに、一定間隔でついて歩きながら、胸のひりひりを感じている。しかし、そんなことがないと、好きだと気づかなかったこと。
また、二人のことをやっかむわけでもなく、痛みによって感じる自分の好きだという感情をいとおしんでいるところが、
なんとも繊細な部分を描いてくれている。

これ、オジサン、オバサンには絶対書けません。
良いと思います。秀作プラスを。

ラストの3連は、敵意がない、やっかむ気持ちはない(むしろ応援してる?)という意味合いで置いてる3連かと思いますが、まあ、この3連は削除でいいでしょうね。なくても大丈夫に思います。タイトル変更も含め、一考下さい。


●エイジさん「詩(うた)を歌う」  

いつもと少し違う、ちょっと翻訳詩的な、表現形態ですね。

作者が、空に向かって詩(うた)を歌うのは、亡き父へのメッセージなんですね。自分が詩を書くことの意義を、そこに見いだされたようです。想いよ届けと、熱唱されているかのような詩だなあと思い、読みました。

4連の後半の、叶わなかった夢の日のこと、
5連の、詩が、七色を放つところは、とても印象的でした。

4連の前半ですが、お父さんの会社って、田舎にあるんですね。単に盆・正月に一時的な里帰りするとかって意味ではなく、父が会社を営んでいる実家に戻って、共に働く日々を送るって意味で書いてるんですね。
そこだけちょっとわかりにくかったです。わかりにくくしている原因は2行目で、

 田舎に帰って

ではなく(この方がわかりやすいのだけど、これではなく)、

 父と一緒に田舎に帰って

としてるところが、混乱を招く原因なんですが
これはエイジさんの事情(病気など)によるところなのか、あるいは車で一緒に帰ることを想定して言っているのか、で付いている「父と一緒に」なんでしょうね。
もし、差し支えなければ、「父と一緒に」はない方がわかりやすいのですが、そこの判断はお任せします。
秀作プラスを。

この詩はねえ、ホントは父がどういう人だったか、またどういうふうに働いておられた方か、父にスポットを当てて書かれた詩と、ペアの方がいい。2作連作の方が、より引き立つと思います。
もし書けるなら、書いたほうがいいです。

この詩単独だと、作者側の気持ちは伝わるのだけど、父がどういう人だったのかが、ぼんやりしたままなので、思いを届ける実像がわからず、対象がぼんやりするのです。ペアとなる詩があれば、それを補完してくれますので。
そうすれば、この詩は名作にランクアップします。


●鯖詰缶太郎さん「帰宅くらいハードボイルド気取らせろ」  

なるほど、3連( )内のセリフは、ハードボイルドだ。なんかキザで、カッコイイ!!
相手が呆れてキョトンとしてても、言ってみたいセリフですね。

初連の「重力的にも」と言い切る、独断もおもしろい。

「そんな事しか考えてないんだぜ」と、フッと自分を静観するところも、おもしろい。
急に、演じる側から、見る側に、身を翻したようでした。

最後はご丁寧に、ペンネームに戻って、鯖の缶詰ですね。
ただ、ここはやり過ぎでしょう。こっちに逃げると、笑いは取れても、深みにはいかない。ここ何書くか、まじめに考えた方が、ここでもう一つ、情感が入るというものです。

舞台が、休日前の、自転車を押しながら、ゆっくり帰る帰り道で、
一人しかいないのに、空振りを承知でハードボイルドを気取っているところですね。
キメたいのに、キマってないとこの妙というか、ユーモアですね。

まあ・・・アリ、かな。秀作を。

しばらくこのコンセプトを続けてもいいかもしれない。リアルを描くのと、リアルの裏でハードボイルドを気取りたい自分がいるのと、っていうツインのコンセプトですね。これ、しばらくシリーズで書いてもいいかもしれない。ただし、話は茶化さず、あくまでマジメに書くってことで。ユーモアはスパイス程度に抑えて。
まあ、私からの提案です。

全く余談ですが、「固ゆで卵」が、何故こういったニュアンスに変転したのか、どこまで転がったら、こういう意味になるのか、「卵」に喩えること自体が軟弱ではないのかと思ったり、いまだに不思議に思っています。全く余談でした。


●凰木さなさん「相対性理論」

凰木さんが繰り出す詩行って、わりといいんだよね。連単位では書けてる人なので、あとは、粘り強く書き、全体でもって語る、という術を覚えれば、私は結構いけると思ってるんですけどね。

あのーー、あんまり早くから省略技法を真似ん方がいいですよ。デッサン力がまだついてない人が、先にデフォルメやるようなことになります。それに、そこの沼にはまると、なかなか抜け出せなくなるしね。遠回りする元になります。
多少のミスがあってもかまわないんで、まずは言いたいことをしっかり、粘り強く書くことを勧めます。

いちおう言いますと、後ろの3連は、

 耐え忍ぶ力
 乗り越える知恵

 絶望の先にしか
 希望は無い

 雨が降らなければ
 花が咲かない様に

この並びにした方がいいです。そこの最初の連は、体言止めです。
それとタイトルの「相対性理論」は却下です。まあこれは、作者的には「MY相対性理論」的な意なんでしょうけどね。定義を持っている専門用語を、安直に使うのはアウトです。
一考下さい。

でも、この詩も連単位では、書けてるんだよね。1~4連のアプローチも、それで良いです。OKです。おまけ秀作にしましょう。


●秋さやかさん「鳥よ」

うーーーん、秋さんらしくない・・・。
構成ができていない。
全体を3部構成と考えると、第1部がまるで死んでいる。
軽ければ序章になったのだけど、なまじ意味重いから、2部、3部との関係性を考えてしまう。ところがどうにもくっつかないものだから、第1部が隔絶して浮いている。

こんな案はどうですか?


鳥よ鳥よ
電線につらなりながら
ずぶ濡れるちいさな塊たち

驟雨から逃げもせずに
親鳥を信じて待っているのか
信じるということを知っているのか

鳥よ鳥よ
自由な風を浴びながら
窓の奥になにが見えたのか

遠い窓に映る夕焼けを
わたしは火事と間違えたことがある
目が覚めるほどハッとした

おまえの体を潰すほどに飛び込んで
どうしてもそこに行きたかったのか

鳥よ鳥よ
おまえの愛はどこにあるのか

羽はどんどん冷えていくのに
どこまでも空高く飛び上がってゆく

一心に呼ぶわたしの声を
おまえは覚えてはいないのか

参考にして下さい。第1部を重くした以上、関係性を整理してみました。
いっそ第1部が軽ければ(叙景に徹すれば)、元の並びでもいいんですけどね。これ、二兎を追う者は一兎をも得ず、的なミスに思います。推敲段階で気付けると良かったんですがね。
パーツパーツはよく書けてます。現状は、秋さんレベルからすれば、秀作止まりですね。
ただ、ご覧のように、この詩はもっと良くなれる詩なんです。一考下さい。


●えんじぇるさん「LIFE.」

えんじぇるさんは、誰かか何かかの保護下にある立場なんですね、たぶん。
なので、初連の「過保護」の詩行に関しては、作者個人の立場が、強く反映したものですね。それをすごく負担に思っているのでしょう。
そして、そこを脱出したい気持ちから、2連目以降が展開されます。
2連目以降は、発想力、語彙力が豊富で、いろんなことを想像させてくれるので、おもしろく読める詩です。正直なところ、作者が意図するところを正確に把握してるわけではありませんし、それだから、正確な意味で賛同できるところまで行っているわけではありませんが、近いところのものを感じさせてもらえるだけで、自分にはない発想もあり、おもしろみを感じさせてもらえる作ですね。特に、

 キュートと過激。青と黒の間の深紫。
 つぶつぶのキャンディ。ピンクの花リボン。

この2行は、どこから発想されたものか、想像もつかない。感性に訴える表現がおもしろいです。
マルですね。荒削りだけど、読むおもしろみがある。秀作を。

話は戻りますが、
2連目以降は、いろんな立場の人間でも、汎用性を持って読めるのです。ただ、初連だけは、その立場の人にしか読めない。そこから発想してるのはわかるけど、自分の立場が強すぎて、汎用性をもって読めない部分なのです。

つまり、最初に書く時はこれでスタートしていいんですけど、あとから推敲する折に、ここはちょっと考えなくちゃいけない部分です。これ、「過保護」を感じてない人には、まるで接点のない話になってしまう。なので、初連はちょっとひと工夫しましょう。

 優しさという暴力。
 親切という偽善。
 奴隷化という目論見。

初連はこれだけでいいと思います。
それと初連を変えた関係で、2連2行目は、アタマに、

 私は涎をたらし

という感じに、一人称主語を入れたほうが、主語の切り替えがはっきりしていいと思います。
それから終連の終行。「人生とは」という言い方すると、それを言うのが若者であったとしても、説教臭くの感じるのは同じことです。タイトルで使ってる語をここでも借りてきて、「LIFEとは」くらいにしておいた方が幾分クッションになっていいと思います。


●理蝶さん「いつもそこにあるこどくについて」  

うむ、なかなか深いねえー
基本的に、心は一つになりたいと求めてるから、似た人がいると、つい自分と一緒だと安易に思い込んでしまう。それが欲求でもあるから。
しかしながら、真実は、ピタリ一緒なんてことはまずないので、どこかのタイミングでそれに気づいてしまう。それに気づいた時、そのギャップをどう認識するかが大事で、もしかしたらその距離で、もう一度愛し直せるかもしれないのだけど、そこがなかなか難しいところ。

私なんかは細分化して、何%で考えてしまう方だけど、この詩では心は心臓のように、細分化できない1つのものとして捉えてるところがミソに思う。
だから、1対1の、直線上の距離感の話に、喩えられてくるのでしょうし、適度な距離感こそが、二人を幸せに包むという話になってくるという、意味合いかなあと解釈させて頂きました。

そういう恋愛観もあるかな・・・。最終的な着地は、結局同じ位置なんでしょうけどね。
遠い位置から用心しながら近づいていくか、いったんくっついてから距離を取るか、人それぞれかもしれんなあー

邪推だとわかってて、敢えて言いますが、作者はまだ傷ついていて、それだから傷つかない方のアプローチを選んでるのかもしれないなあーと、想像するところもあります。
以上、邪推でした。

しかしながら、人間の持つ孤独感が、どこまで行ってもゼロにはならんことは確かです。
なかなか深いお話の詩でした。ちょっとモノローグ調の話になってしまうんで、敢えてひらがなにしたんでしょう。
出だしの1~4連は、もちろん意味を持ちつつ、奇想天外な比喩にもなっていて、そこはぐっと引き込まれました。良かったです。でもって前の4連のテイストのことを思うと、後ろの5連も、どこかで比喩を入れた方がいいかもしれませんね。入れるとしたら7連かな。あるいは後ろ5連の内容を4連に圧縮して、1つは比喩の連として割り切ってしまってもいいかもしれません。

ちょっとそこだけ工夫してみて下さい。
気持ちはわかったんで、秀作プラスを。


●じじいじじいさん「あついあき」  

おお、今回は丁寧に書いてきましたね。こうでなくっちゃ!!
秀作あげましょう。

半袖で学校 体育の時間、汗、ワンピース、スズムシ、ドライブ、わすれんぼう、など
こういう細かなところまで、思いを巡らせるから、おもしろくなる。映像的にも、いくつもの場面が浮かべられる。なので、いい作品になります。

こうでなくっちゃ! この書き方で、これからもよろしく!!

ああ、1ヵ所。
「こんなにあついあきさはじめてだよ

は、あきさ、のあとをひと文字空けるのを忘れてるのでは???


●上田一眞さん「父の戦争」

私らの世代って、親が戦争を体験をしてる世代なので、親から聞いたことを、自分たちの次の世代に伝える責任を背負ってる世代でもあると思うんですよ。戦争の実態、ナマの話が聞けるのは、体験者ならではだし、その世代の人がいま年齢的にどんどん亡くなっていってる年齢なので、こういう話はますます貴重になってきています。
日本は石油を輸入してるくせに、戦争を始めて石油の輸入ルートを断たれてしまったものだから、石油の入手ルートに困難を来たすようになり、戦争中は、人間の「血の一滴よりも油の一滴」の方が大事と、誇張ではなく、マジで謳われたそうです。その傾向は、終戦に近づくほどひどくなり、たぶん、油をこぼしても殴られたはず。そんな感覚だから、「人の換えはいるが、馬の換えはない」「人より馬の方が大事」という言葉も、当時の軍部なら、言いそうなことだと、私には想像がつきます。ただ、こうしたことを知らない人も多いので、伝えてあげて欲しい内容です。
また、体験した父から聞いた話として書かれているので、説得力がある。単に情報だけで書くのではなく、ここがあるのは大事なことです。また、作品としても、よく書けています。
名作あげましょう。
済州島は、今は観光地として、日本人が行くことも多いので、そんな歴史を添えるのも、良いことと思います。

ちなみに、私の父は特攻帰りですが、戦争のことをあまり語りたがらない父が、それでもよく口にしたのは、「あんなもん、飛ぶかえ」「電線に引っ掛かって、よう死んだ」のふたことでした。これは、終戦前頃になると、精密部品を作る機械もない、部品を作る材料もない、熟練整備技師もいない中、メンテナンスできてない、定格出力なんか全然出ない飛行機に乗せられて、練習段階で落っこちて死んだ、戦友たちのことを言っています。翼さえついてりゃ、どんなのでも乗せられたんですね。特攻の出撃基地である知覧に集合する段階で、もう部隊は半数以下に減ってるんですよ。それまでに落ちて死んでるんです。終戦前頃の特攻の実態です。父は元々、偵察機のパイロットから特攻に回されたクチだったので、「あんなもん、飛ぶかい」と、よくわかっていたようです。

また、日本の戦争の実相を調べていくと、インパール作戦を筆頭に、敵に殺されたというより、軍の上層部の無謀な作戦によって、飢餓や病死で亡くなった人が相当な数いることがわかります。これらの人たちを殺したのは、敵ではないと思いますよ。

編集・削除(編集済: 2023年11月28日 06:35)

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