私は誰の痛みも分かっていなかった 紫陽花
今まで何回転んだだろう
その度に痛みを覚えた
初めて自転車に乗って転んだ
血だらけの膝を抱えて
泣いた私
あれから数えきれないほど
転んで転んで
その度に痛いと感じた
絶対に忘れないと思った
大人になった私は
あの頃より転ばなくなった
でもあの痛みは覚えている
そう思っていた
だから我が子が転んだとき
私は自然と痛いねと声をかけた
私も痛いつもりになっていた
私は先週腰を痛めた
立ち上がり 歩き初めに
腰に鈍い痛みが走る
痛いとはこういうことか
今更ながら
私は痛いということを
忘れていた自分に気づいた
腰痛に悩んでいる義父に
痛いですねなんて言っていたが
私は一つも一ミリも分かっていなかった
この体の痛みを
ただ悔しいことに
現在私の腰は治りつつあり
また私は痛みなんて全く分かってない
誰の痛みも分かってない
どうしようもない私に戻りつつある