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スレッドNo.3174

小春日和  静間安夫

波乱多き
わたしの人生に
ようやく訪れた
穏やかな日々

終の棲家になるかもしれない
小さな住いの
古風な書斎の窓から
今 陶然として眺めている―

わずかばかり残った
木々の黄色い葉が
かさかさと音を立てて
舞い落ちていくのを…

ときおりヒヨドリが
甲高い声をあげながら
屋根と屋根に区切られた空を
斜めに横切っていくのを…

路地裏の日溜まりからは
こどもたちの声が
とぎれとぎれに聞こえてくる
石蹴りに興じているのだ―
入り日と競争するように

そして わたしも
あかね色に染まり始めた
西の空をむさぼるように眺め
晩秋の世界に溶け込もうとしている

やがて
乏しいけれども柔らかい夕日に包まれて
我を忘れてしまうだろう
自我の重荷に苦しむこともなくなるだろう

こうした心持ちにたどり着いたのは
もはや限りある時間しか
自分には残されていないことを
悟ったからこそ…

自分自身にも
周りの世界にも
心底から満足している―
そんな気持ちなのだ

さりとて
穏やかな日々が長く続かなくても
いっこう構うところではない
時を経ずして
冬の訪れを告げる
刺すような木枯らしが吹きすさび
またたくまに
氷と雪に閉ざされる日が来ようとも
恐れるものではない

なぜなら
今のわたしには
はっきりとわかるから―
そうした凍てつく厳しい寒さのうちにも
ひっそりと救いの力が生れていることを…
待降節の人々の祈りは必ずかなえられることを…

もはや
わたしはこの世にいないかもしれないが
降誕祭のときには
再び冴えわたった夜空に
幼子である神のもとに
人々を導く星が現れるだろうことを…

編集・削除(編集済: 2023年12月17日 21:13)

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