カレーライス 荒木章太郎
仕事帰りはどしゃ降りで
駅前では女が二人立っていた
金が欲しいと立っていた
俺は鞄の中をびしょ濡れにして
カビが生えた過去しかないと跳ね除けた
おじさんの皮を
剥いたらマーメイド
マーメイドの皮を剥いたら
マーブルケーキな子供の頭
頭を剥いたら何もない
今宵は一人カレーを作る
出てゆく君が泣いたのは
俺が玉葱だからだろうか
剥いても剥いても皮ばかりと
匙を投げてしまったか
玉葱の皮には役割がある
中身がないことを受け入れ
剥いたものと君のものとを
混ぜて炒めて煮込めば良かった