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スレッドNo.3190

感想と評 12/15~12/18 ご投稿分 三浦志郎 12/23

お先に失礼致します。


1 上田一眞さん 「晩夏の蛍火」 12/16

冒頭佳作です。
現代の詩ながら、どこか中世文学に誘われてゆくような、そんな趣ある詩です。まずは防府市橘坂について調べ、映像も観ました。鄙びた道が続き、海が綺麗に見える、なるほど景勝の地ですね。ことさら「橘坂」が出て、「五日前 突然~」のくだり、「朝には紅顔ありて~」の句がある。母上は、何か不慮の死を遂げたことが想像されます。主人公の悲嘆の甚だしさも、そう感じさせます。そういった背景の中を飛ぶ蛍です。蛍を化身と感じ見つめるその感慨。「御文書」に見る無常観。これらがこの詩の柱となります。そういった日本古来の思想もあるのですが、僕はそれ以上に、文体が、その感覚が、2行目に書いた感想に繋がっていきます。これはひとつの技術となって、この詩にしっくり溶け込んでるのを感じました。詩情たっぷり、終わり方も印象的です。これは上田さんコレクションでもハイランキングになりそうです。


2 エイジさん 「言の葉紡ぎ」 12/17

この詩には言葉を生み出す時の辛さが書かれていない。これは批判ではなく祝福です。
詩に向き合う際の肯定性の中で書かれています。そこに詩的係数としての「言の葉」の喩えが入ってきます。そこから比喩世界を広げる。2連と5連の前半しかり、です。僕は4連と5連後半の書き方も好きですね。「幸せ」「楽しい」と「かかっている」「慎重な作業だ」などの硬軟のバランスもいいでしょう。この詩の背景は一言で説明可能です。「好き」だからです。「好き」という理由は全てを覆う理由です。
前回、少し”ベタ“という指摘をしました。今回はさほどでもないですが、少し痕跡を残すかのようです。甘め佳作を。

アフターアワーズ。
そうですね。僕も大体、この詩の感覚ですね。書いてる時は辛さはないです。「やりがい」とか「生活のハリ」といった感覚に近いです。辛いのは言葉や作品が浮かんでこない時です。歳と共に、そういうのが増えていきますね。


3 静間安夫さん 「小春日和」 12/17

今回、二度目の登場です。おそらく年配のかただろうと思います。それにふさわしく、文体は端正に整えられ、ゆったりと落ち着いています。
こういったものはやはり年輪が関与してくるでしょう。
この詩の動きを図示風に書くと、僕はこんな風に感じました。

心の豊かさが→ある種の強さを生み→それらを背景として心の平安が訪れる→悟りや達観の境地に至る。

これらが非常に順序立って整列し、文体と共に構成美を成しています。クリスマスに至るまでの時の流れ(待降節・降誕祭)をこのように書くのはキリスト教に造詣が深いのかも。一点、気がかりなのは「わたしはこの世にいないかもしれないが」です。どのように受け止めればいいのか?
今回から評価が入ります。書けそうな人ですが、基準としての佳作一歩半前からで。


4 晶子さん 「靴を鳴らして」 12/17

タイトル、ステキですね。 これは人によってさまざまに解釈可能だと思うのですが、僕は濃度濃い目の暗喩詩と把握しています。対象となるものは生活の仕方、生き方、好きなものとの接し方などでしょうか?アプローチの仕方としては「さりげなく、ナチュラルに、自分らしく、そして、わずかに匂わせる”ケセラセラ“」――。個人的には「音に合わせてスウィングすれば」が好きですね。「オ~、イェ~」ってな感じ。わずかに感じるメッセージ性を軽やかな語り口に乗せ好感です。
メッセージと言えば、終わり2行はちょっと“ハズした”ところがカッコイイ。タイトル兼中心詩行になる「靴を鳴らして」はなかなかシャレています。爽やかでいいですね。佳作を。

アフターアワーズ。
爽やかついでに言うと、初連のみ、ちょっと重たく爽やかでない。8行を2等分してもいいかもしれないです。


5 ベルさん 「ある日」 12/18

これは「ある日」に実際体験したことを綴ったように僕には思われます。その対象となる「君」は詩史上、有名な人というよりはむしろ普通の人が書いた詩に感動したと推測されます。その方がこの詩に似合う気も致します。よろこびの詩を読んだ結果、生み出された本作もよろこびの詩なのであります。生まれたこと、出会いのこと。反面、人はいつか消える、が、証だけは守られる。それが詩というものでしょう。それらの事情を詩は勇気と永遠といった概念で締め括ります。賛歌でしょう。
ところで、最後の1行が少し気がかりになりました。 ①文中「君」で統一されているが、此処だけ「あなた」である点、その関係性は? ②「いつかめぐり遭う」の語感には「今は未知だが」のニュアンスが伴いがち。いわゆる不特定多数的。してみると、前文との整合性や、いかに?
以上、2点が考えられ、着地が少し不安定な気はしたのです。佳作半歩前で。


6 理蝶さん 「うつわ」 12/18

もともと穴の空いたうつわなるものを考えてみましたが、うまく思いつきませんでした。常識を少し外したところから始まるのか、それとも(以前は健全だったが)、後天的に負の要素を負ったのか、傷ついたのか、たぶん後者だと思う。ただし、この件はさほど問題にはならないでしょう。なぜならば、それ以降の主人公たる「うつわ」の精神性がこの詩の主要部分であるからです。今の構造上、通り過ぎるのはやむを得ない。しかし忘れない。熱い記憶として、全てずっと留めおく。その気概のことです。負を負いながらもけなげに気高く刻印する。終わるまで――。
このうつわの様態がユニークな着想だし、全篇を流れる思想に見事に寄与しています。その高め方に佳作の証明があります。


7 大杉 司さん 「咳」 12/18

僕の独断と偏見かもしれませんが、俳句・短歌の世界は極度に散文的ということを嫌うような気がします。詩は散文詩という分野があるくらいですから、さほどでもないのですが、この詩はやはり散文的なところがあって、もう少し詩的純度は上げておきたいのです。策としては、語るべきは最終連という気がします。例えば、2~4連は削除してもいい。1連~5連~7連と繋いで(ここも少し省略形でも可)、繰り返すようですが、この詩において大いに語るべきは最終連。どんな気持ち?(こりゃ、大変だ!)それとも(大したことはないだろう)? 会社は?etc。そんな部分をふくらませて書くといいと思います。大杉さんは今日的なモチーフを掬い取っている点に優れ、好感をもっておりますが、修辞的に詩的な表現を用いれば、さらに良くなると思っています。そのあたりを意識してもらえればいいと思っています。佳作一歩半前で。


評のおわりに。

さて、いよいよ年末本番といった感じ。クリスマス終わると、ドーッと行く感じ。
ミウラやるべきこと。 忘年会1件、除草作業、窓拭き、年賀状、仕事納め、2年越しの評エリア。
評投稿のほうはこれが今年最後になります。一年お付き合い頂き、誠にありがとうございました。

編集・削除(編集済: 2023年12月23日 14:29)

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