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スレッドNo.3214

踊り場の窓から  朝霧綾め

一階から二階に行く
階段の踊り場
窓から顔を出すと
しめった風が吹いていた

風は私の髪を揺らして
頬を撫でた
雨の匂いを運んで
首筋をくすぐった
なぜかなつかしさを
感じさせる風だった

私の耳もとを通り抜けるとき
風がささやいた
 久しぶりですね

私ははっと気がついて
手をのばした
けれどその前に
ひとすじの風は 消え去ってしまった

ああそうだ
私はこの風に
昔出会っていた

こんな雨上がり
ひとりで踊り場に立っていたとき
寂しくないのに寂しい気持ちだった
やることは多いけど退屈だから
窓から顔を出し
外に目をやっていた

今より少し
幼かった私を
あの風は知っている
意味もなくふさぎこんでいた私を
友だちの作り方さえ
よく知らなかった私を

ちょっと 照れくさい
そしてただ
なつかしい

 久しぶりですよ
私は静かに呟いた
あたたかいかすかな吐息が
しめった外の空気にとけていった

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