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スレッドNo.3219

12月12日から12月14日までのご投稿分の感想と評です。   夏生

大変お待たせしました。
2023年12月12日から12月14日までのご投稿分の感想と評です。



「友だちについて」 妻咲邦香さん

妻咲邦香さん、今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「友だちについて」の評を送らせていただきます。

作品を読みながらイマジナリーフレンドを思い出しました。
懐かしさより痛み、どうしようもない寂しさがあって。
個人的な思い出が大きく揺れました。あの頃の自分が見たもの
出会った「友だち」の記憶がよみがえりました。
「友だち」は自分自身であったかもしれない。あるいは一時の夢だったかもしれない。
それでも心の中にいることは確かであることは最終連でわかります。
幻想でも夢でもなく誰よりも真摯にまっすぐ自分と対峙してくれる相手がいた。
おそらく今も。
寂しさよりも不思議なあたたかさを感じました。
御作佳作とさせていただきます。



「際にて」 積 緋露雪さん

積 緋露雪さん、今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「際にて」の評を送らせていただきます。

<いつもだと軽軽と奈落に落ちる吾なれど
今回はばかりは際にて立ち止まりをり

冒頭から惹きつけられました。ここがどこなのか主人公がどんな状態なのか
想像が巡ります。
深い闇と柔らかい光が交互に見えます。その上を主人公の考察がのって
展開されます。主人公は光より闇を、無限大の闇に心動いているようです。
無限と夢幻。同じ読み方で理想的な状態に惹かれていきます。
<光が輝くためには
 無限大の闇が必要だろうといふことに帰す
る筈だ。

光が強ければ闇は深くなる、というよくある考え方を
反転させ、闇側の視点で光を捉えた言葉にはっとしました。
この捉え方が作品に力を与えているようで冒頭の引力を持続させています。
最後の四つの句は四つの光と影を描いた心の絵画のような印象でした。
御作秀作とさせていただきます。



「水たまり」 月乃にこさん

月乃にこさん、初めまして!ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「水たまり」の感想を送らせていただきます。

水たまりにおぼれる人々。どれほど深い水たまりなのか
おそろしいほど皆おぼれていきます。
主人公は恐れずに笑います。くくく、ではなく、けけけ、という
ところに不気味さを感じます。
おぼれても誰もしなないようで、それでも苦しそうな息継ぎを
しています。主人公もおぼれながら一歩引いたところで見ている。
妙に冷静です。雨の勢い、広がる水たまり、おぼれていく人々。
こわがる間もなく事態が悪化していく様を冷静な眼差しで捉え
<そのうち
 晴れる

と、きっぱりさっぱり断言します。大丈夫、と言う言葉より力強く
潔い言葉でした。
この水たまりは何なのか、主人公はなぜ冷静でいられるのか
想像と考察を楽しむことができる一篇でした。
またのご投稿お待ちしています!


「生きる意味」喜太郎さん

喜太郎さん、今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「生きる意味」の評を送らせていただきます。

<生まれてから死ぬまでの意味を求めるなら
それ自体が無意味と知る時には
脳細胞はどのくらい死んでいるのだろう

意味のないことは削除、無駄なことも削除を推奨するような
世のなかで、生死についても意味の中につなげようとしてしまう。
人間の悪癖のようなものなのかもしれませんし、。
御作はもっとわかりやすく、自然の流れとして生きることを細胞分裂として
分析して展開していきます。ここがよいですね。感情で丸め込むのではなく
当たり前のこととしてとらえ、一歩引いた目線で意味に囚われた心を見ています。
<生まれて死ぬことに意味を求める前に
死んでも構わないと思えるほど
人を愛してみれば良い

ここで一気に温度が上がります。命は大事、人生とは・・・と諭されるより
こちらの方がぐっと心に響くだろうと思いました。
どんな無理難題も愛する人のためならば!と動くことが出来れば
<「意味」の影は追えるかも知れない
最後に心の温度がぐっと上がって「生きる意味」が光っているように
見えました。
御作佳作とさせていただきます。



「沼地にて」 荒木章太郎さん

荒木章太郎さん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「沼地にて」の感想を送らせていただきます。

主人公は逃げています。何から逃げているのかわかりません。
天からの声か、自分自身の心の声が聞こえます。
<お前の代わりはいくらでもいる
お前一人が償えるものではない
底にいれば良いのだ

大きな複数の罪を犯した先人の声のようにも聞こえます。
主人公自身が犯した罪ではなくても、国の、人種の、性別のなかに
生きている以上逃れられない罪を感じているようです。
そこから逃げようとする。逃れることはできないとわかっていても。
「声」は逃げ切れるものでない、と諭します。
底で向き合えば良いのだ、と。

向き合うことからも逃げたくなるような気持ちが読後の余韻の中に
ありました。
何かはっきりと書かれていなくても、感じられる、伝わるものがある一篇でした。
またのご投稿お待ちしております。




「溶けていく」紫陽花さん

紫陽花さん、今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「溶けていく」の評を送らせていただきます。

静謐な夜。黒猫「溶けていくのよ」としゃべり始める。
猫を通して闇夜の儚さを感じます。
<夜なんてなかったみたいに
なにもかも溶けていく朝は
いつかきっと来る

時間の流れの残酷さが穏やかに漂っています。
夜明けを待ちわびる心がある一方で、留まりたい夜も
あって。
しゃべる猫の優雅な雰囲気は夜の闇の中だけに
存在するようで、その儚さは美しいと感じました。
溶けていくものたちのつかの間のひとときのきらめきを
見ました。
御作佳作とさせていただきます。

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