冬の風は 紫陽花
使い込んだ窓のどこかに
少しすきまがあったよう
すきま風がしゅるんと
遠慮しながら入ってきた
カーテンをしっかり
締めておかなかったから
すきま風はそのまま
部屋の隅っこに落ち着いた
すきま風は歯をカタカタ鳴らしている
すきま風はどうやら風邪をひいている
小さくカタカタ震えている
締め出そうと思ったけど
あんまり震えているので
私はすきま風に緑の毛布をかけた
すきま風はやっぱり震えながら喋り始めた
私 冬は居心地がとても悪くて
夏にはあんなに喜ばれたのに
今はちょっとぴゅっとでも言えば
皆が冷たい寒いと窓を閉めて
ドアも閉めてしまう
私はいつだって風なのに
私は流れる空気なだけで
嫌われたり好かれたり
それで近頃悲しくなって
気温のせいで体が冷えきって
免疫が下がって 遂に私は風邪をひいた
そんな話を聞くうちに
部屋の暖房で暖まってきたすきま風が
ほんのり春風めいてきて
話す度に私に春風が
するーんと吹いてきて
本当の春まで ここにいていいよって
思った冬の日だった